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オイショッ…オイショッっと
「ちょっと!君!
そこで何をしているのですか!」
登るのに夢中になって
いきなり声がしたからビクッ!っと肩が跳ねたせいで、バランスが崩れた。
やば!!落ちるっーーー
ってあれ??痛くない。
恐る恐る目を開けてみると
黒目黒髪で眼鏡を掛けた綺麗な人が
眉間にしわ寄せてこちらを見ている。
「あの、重いのでさっさと降りてください」
今の僕はこの人にお姫様抱っこ状態で
慌てて飛び降りる。
「す、すみません!門の開け方が分からなくて…助かりました。ありがとうございます!」
「全く…危ないじゃないですか!
怪我でもしたらどうするんですか!私が!」
見かけによらず優しい人だなと思ったら
そうですよね、自分大事ですよね。
「それより、貴方もう少し身だしなみを整えた方がよろしいのではないですか?
この学園で過ごすには悪い意味で目立ちますよ…」
僕の姿を見て笑顔が引きつっている。
今の僕の格好はというと……
ボサボサの黒髪と分厚い丸メガネ。
まぁ、これ鬘だし伊達メガネなんだけどね。
なんで変装しているかと言うと
僕の髪の色と目の色が珍しくて
父さんや秋兄(しゅう兄)から
『こんな可愛い雪兎が
そのままあの学園に行ったら大変だよ!!
これして行きなさい!』
『そのままだと獣の餌食だぞ。』
と言われたので仕方なくこの格好で。
獣って…
「僕、見た目あまり気にしない方なので
このままで大丈夫です…」
「そうですか…、
まぁ貴方がよければ別にいいですが…
そういえば、自己紹介がまだでしたね。
私は2年A組で生徒会副会長をしています
冠木 麗(カブラギ レイ)と申します。今回理事長に頼まれて転入生を迎えに来ました。」
副会長さんだったんだ…
しっかりしてそうで綺麗な人だなぁ…
格好いいんだけど綺麗って言葉の方がしっくりくる。
「あ、僕はですね…み、
光井 雪兎と申します。宜しくお願いします」
お互い自己紹介を済ませ
副会長さんの後を付いて校舎へ向かう。
母さんの話では
ここは王道学園と言うものらしい。
山の中にある男子校ということで
思春期の真っ只中である男子しかいないので
同性愛が芽生えるものが多いとか…
『雪ちゃん!総受けになってくるのよ!』
と訳の分からない事を言われて
送り出された。
「こちらが昇降口になります。
1年生の下足箱はここです。一つ一つの扉には
カードキーが付けられていますので、
自分のICカードを挿せばロック解除です。」
そういえば転入前に学校の資料と共に
郵送されて来てたっけ…
ポッケからICカードを取り出し差し込むとピッと音がしたら下足箱の扉が開いた。
「そのICカードは常に持っていてください。
本人確認および食堂や売店などの支払い、
寮の部屋のカードキーも全てICカードです。
無くさないように気をつけて。」
「はい、」
なんてハイテクなんだと思う反面、
絶対無くさないようにしよう…
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