森の泉

4/6
5人が本棚に入れています
本棚に追加
/22ページ
「コバルトは、大陸で夢見草が咲いているところ、知ってる?」 「夢見草? 知らないよ。ハイシロは知りたいの?」 「私じゃなくて、ツキシロが探してるの」  コバルトは目をぱちくりさせた。 「そうなんだ。じゃぁ、探しとくね」 「もし、あるところがわかったら、ツキシロに教えてあげて欲しいんだけど」 「オッケー。情報があったら一族全員で共有しとくよ。誰がツキシロに出会っても、教えてあげられるようにね」 「お願いします。じゃ、ツキシロの分。もう一個砂糖玉食べる?」 「わーい! ありがとう」    コバルトは水掻きのついた手を差し出した。その掌に、マーブル模様の砂糖玉を一つ転がす。 「コバルトは、いつもここに居るの?」 「今日は、私の当番。シアンの時もあるよ。一族の他の者の時もね。ここの真下が水の精霊様の巣だから、入れ替わりで清めに来ているの」  砂糖玉美味しいねーと、コバルトは微笑んだ。  老賢者さまを揺り起こして口説き落とさなくても、ここに来ればツキシロの消息は分かるかもしれないんだ。そう思ったら、ホッとした。いつまでたっても帰ってこないから、正直心配していたのよね。 「ほんとうにどうもありがとう」  重ねて礼を言い、ピッチャーに泉の水を汲んでコバルトに別れを告げた。コバルトは水音小さく泉に戻ると、ひらりと手を振って水底に帰っていった。  両親にも、ツキシロの消息を教えてあげなきゃな。明日は久しぶりに実家に帰るか。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!