森の泉

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「お嫁さんの国に行ったら、夫さん重宝されるよねー」 「何てったってグリーンフィンガーだもんねー」  うんうんと頷いていると、ウツギが「それでさ」と話を継いだ。 「借りは返したし、ハイシロの謹慎も解けたことだし、今夜、祝杯上げに行かない?」  左手で盃をあおるジェスチャー。 「え?」  泣き上戸の、絡み酒……。  つい先日の顛末を思い出して、内心げんなりする。 「いや、今日はちょっとぉ……」  ウツギから顔を背けて明後日の方を見る。 「だいじょぶだよ、今日はー。泣かないしー、絡まないからー」 「えっと、その……心の準備が」 「えー、コホン」    戸口にクロベニが立っていた。心臓がドキンと跳ね上がる。 「始業時間が過ぎておる」  重々しく宣言された。 「はいはいはい! すみませんっ! 仕事にかかりますっ!」 「私も戻りますっ!」    ウツギが慌てて退出していった。  周囲がスンッと静かになった。クロベニがジロリとこちらを見る。 「まぁ、なんだ。たまには私にも褒めさせろ。……頑張れよ」    軽く咳払いをして緩んだ顔を誤魔化すと、クロベニは踵を返して出て行った。  え? は? 何今の? なに? 今のーーー!  オジサマ、カワイイかよっ!  何とも言えない感情と含み笑いがこみ上げてきて、しばし仕事が手に着かなかった。    < 終わり >                         
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