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「わわわ! 待ってください。今日は現地確認に来ただけなんで、ここで争いごとは……」
唾を飛ばしあってつかみかからんばかりの言い合いになった双方を、慌てて引き離す。
「あーもー、ここは仕切りなおして双方納得のいく境界線を新たに設置するのでは、ダメなのですか?」
「「嫌じゃ」」
こっち向いて異口同音に答える。
……そこは仲良く同意なんだ。
「だいたい、新たな境界線を引いて自分の畑を広く取ろうという魂胆が透けて見えるんじゃ」
「そりゃぁ、そっちだってそうだろうが、この業突く張りめ」
「何を? 今年はそっちが広く作付け出来たからって思いあがるなよ。境目より大幅にはみ出して作付けしおって」
「いいや! ここが本来の樺の木の位置だ。お前の勘違いだ」
「ああ、はいはい。わかりましたから、この事実を今から持ち帰って……」
再び言い争いが始まった双方を押しとどめようとしたら、今度は矛先がこっちに向いてきた。
「あん? どの事実を持って帰るって言うんだ。今年の境界はこやつが勝手に引いたもんであって、本当じゃぁないんだぞ」
「このおいぼれの言うことを本気にするんじゃないぞ」
「ですから、今現在は境の樺の木は無いということと……」
「いーや! 樺の木はあったんじゃ。この小娘め!」
「そうじゃ! 樺の木があったところが本当の境界なんじゃ!」
「つったく、こんな小娘よこしやがって司法局の奴ら……」
「我らの糊口をしのぐ大切な麦畑の話なんだぞ。馬鹿にしおってからに」
「お前にゃ力不足じゃ。もっと上のヤツをよこせ!」
んもー、二言目には樺の木樺の木って、自分らで切り倒して引っこ抜いてどこにあったのか分からなくしたくせに!
あったまきたわ!
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