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未熟者
「ハイシロ……」
怖い怖い怖い……。
王宮に戻って、クロベニに現地見分の顛末を報告した。老賢者様たちと議場にいたクロベニは、無表情でこちらを見下ろす。ただただ小さくなって恐縮するしかない。今日のところはあくまで「現地見分」であって、見分結果を報告した後、沙汰を下すのが正式な手続きだ。それを、すっ飛ばして勝手にどうにかしてきてしまった。
「クロベニよ、そんな怖い顔しなさんな。クソ爺ども相手に、ハイシロはなかなか頑張っておったぞ」
私の後ろでシロガネが助け舟をだす。クロベニの眉がピクリと動いた。
「お前はまだ駆けだして、順を踏むところから覚えないとならない立場であることは、よくよくわきまえておろうな」
「はっ、はいっ!」
「上の決めた手順があるということはだ、何かあった時、上が責任を取ることができるということなんだぞ。ひいては、お前を守ることなのだ。お前が勝手をすると、私は責任を取り切れなくなることがある。最悪、仕事を追われることもありうる」
ひえぇ~。それは困る。申し訳ない。
「本っっ当に申し訳ございません」
深々と頭を下げる。口答えする余地はない。結果オーライなどと茶化すことも出来ない。反省文書かされるのかな? 減給処分かな? 沈痛な面持ちで下を向いていると、老賢者の一人が口を開いた。
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