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「砂糖玉を落としたでしょ? お願い事はなあに?」
「あ、……ああ!」
お供え! だと思われちゃったんだ!
この泉には今まで何度も水汲みに来たし、泉の下は水の精霊たちの世界に通じていることは知ってたけれど、実際に「お願い事」をして供物をささげたことは無かったからピンとこなかったよ!
「はわわ……ごめんなさい。間違えて落っことしちゃったの」
とっさに思いつく願い事なんてなかったので、正直に答える。女の子は、瞳を持たない水晶のような目を瞬いて首を傾げた。
「本当に? 何にもないの? お願い事」
んーそうだなぁ……。
「えと……強いて言えば、ツキシロ、今どこにいて元気で居るのか知りたい」
「ツキシロ? だあれ?」
「私のお姉ちゃん。旅に出てるの」
「オッケー! 待ってて」
女の子は、小さな水音を立てて泉の底に消えた。
オッケーって、待っててって、言ったけど、今、大陸のどこにいるのかもしれないツキシロがどうしているのかなんて、いつも半分寝ぼけてる千里眼の老賢者を起こして聞くぐらいしか方法がないのに水の精霊に分かるのかしら?
しばらくして、女の子が再び浮かび上がってきた。
「いたよ。黄の国の青の民の港。元気だったよ」
「……すっごい。どうして分かるの?」
「相手が水鏡に映るところに居ればわかるよ」
「元気そうなら……よかった」
「時計? 修理に出せたよ」
「!」
ああ、ツキシロ、やっと見つけたんだ。細工職人……。
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