森の泉

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「教えてくれてありがとう。私は、ハイシロ。いつも、ここの泉の水を夢見草のために利用させてもらってるの」 「私は、コバルト。私にも、シアンっていう姉がいる」 「コバルトは水の精霊なの?」 「違うよ」  コバルトは、岸辺の岩に手をつくと体を引き上げた。  手には水掻きがあり、下半身は深い青に煌めく鱗で覆われていた。 「水の精霊は真珠色の鱗も麗しい大蛇様だよ。私は、『海の歌姫』の一人」 「海? この泉、海にもつながっているの?」  (げん)の国は海から遠く離れている。深い谷を挟んだ大陸の南側には大河を境に(おう)の国(ろく)の国という大国がある。その二つの国の南側が海だ。玄の国は、北は黒い森を背負い、更にその北はほぼ一年中氷に覆われた未踏の世界。 「海が……っていうか、水の世界があるよ。『海』は水の世界の出口の一つだよ」 「ふうん」  知らないことはたくさんあるなぁ。そうだ。水鏡に映るものなら何でも知りうるのだとしたら、夢見草のこともあるいは……。
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