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謹慎が明けて久しぶりの出勤。仕事が溜まってるんだろうな、と思うと気が重い。仕事部屋の扉を開くと、ウツギが作業机についていた。
「おはようございます。って、え? なんでウツギがここに……」
「ハイシロ、おはよう。休んでいた時の分はあらかた片づけといたわよ」
確かに机のわきにある連絡便は、今朝の日付のものだけだ。休んでいた時の分は、仕分け棚に全部収まって回収を待つばかりになっている。
「ウツギ、自分の仕事もあるのに……ありがとう。手間かけさせてごめんなさい」
ウツギはニヤリと笑うと、顔を寄せて言った。
「こないだの借りを返しただけよ。お気になさらずに」
「えー、それにしてはおつりがくるよ」
正直、厚意が重い。困惑してると、ウツギがさも愉快そうに笑った。
「あの後、例の仕事がトントン拍子にうまく片がついてね、ちょっと手が空いたからやっといただけだから。そんなに恐縮しなさんな」
「例の仕事って、問題児のお姑さんの……」
「そうそう。まぁ、座って。仕事前に、気合の一杯飲みませんか?」
ウツギはカフェインたっぷりのお茶をカップに注いだ。
「夫のみの個別聴取日を設けたよってとこまで話したよね」
「うん」
椅子に座りながらカップを受け取る。
「夫さんの方は、こないだの姑の独演会を聞くまで、姑の行為は心配が行き過ぎただけで悪気はなかったんだと思ってたらしいのね。でも、悪意ありまくりで他人様までディスり始めたのを見て、完全に目が覚めたって言ってた。姑としては、夫さんが誰を連れてきても気に入らなかったんだと思う。玄の民の嫁以外は認めないって思ってたらしいし」
「ほうほう」
滅茶苦茶苦くて目が覚めるお茶をすする。
「夫さんは、最後まで嫁に添い遂げるつもりで連れてきたのに、それはないだろ、と。もちろん、子どもは欲しかったけど、それは連れてきたお嫁さんに心底惚れてたから、お嫁さんとの子が欲しいと望んだわけで……」
「そしたら、夫婦にとって姑は完全に要らないヤツってことに」
「そうそう、そうなのよ。でね、夫の話をお嫁さんに持って行ったら、お嫁さんも姑さんがウザいだけで、夫とはまだ修復の余地があると言い出して」
「おお! 収まった!」
「うん。二人して、玄の国出て行った。それが昨日の話」
「いいねぇ。未来のある話で……」
ウツギはニコニコしていた。夫婦二人だけの幸せを橋渡しして、クソババアに一発お見舞いしてやったわけだ。それは胸のすくお話だ。
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