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「夫の方はグリーンフィンガーで、だからこそ農業国の緑の国のお嫁さんを迎えたわけなんだけど……」
「ふんふん」
グリーンフィンガーとは植物の栽培能力が頭抜けている人のことだ。玄の民ともなると、触れただけで植物を活性化させることができる御仁もいるらしい。
「お姑さんは植物の声が聞ける能力者でさ」
「うん?」
「夫婦の寝室に花を飾って盗聴まがいのことまでしてたらしいんだわ」
「うわっ、きもっ。てか、植物でそんなことできるの?」
思わず眉間に皺が寄る。
「よくわからないけど、できるらしいよ。夫婦で仲良くしてる頻度とかまるっと把握されてたらしいから。おまけにお嫁さんの月経周期まで」
「うへ~……。自分より長生きする姑にそういうことされるって最悪じゃん」
「んで、今日、夫側の個別聴取だったのよ。それがさ……」
再びお酒をあおる。
「夫に姑がくっついてきたのよ!」
なんか、ピッチが速くない? だいじょぶかな、ウツギ……。
「やー、この姑しゃべるしゃべる。誰の調停だよって勢いでさ。うっさいのなんの」
空のデキャンタをドンっと勢いよくテーブルに置く。
わお、ウツギってば全部呑み切っちゃった。
「挙句に、私のことまでディスってきて、もー最低よぉ……」
急にうつむいてプルプルしだしたウツギに、どうしたらいいのか分からずおろおろしてしまう。とりあえず、なんか食べてる場合じゃない。
えー、どうしよーと思ってウツギを見守っていたら、急にガバッと顔を上げてしがみついてきた。
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