黒鬼

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「ね! ね! ひどくない? 今現在、私が彼氏もいない独り身だからって、馬鹿にされる筋合い無くない? 結婚してないから親不孝とか、子どもがいないから親の気持ちがわからないとか、余計なお世話だっていうのよっ! 黙れこのクソババア! こちとら仕事だから、話聞いてるんだっつーのよっ! そもそも今日は、夫の話を聞くための個別聴取でアンタのクソみたいな話を聞くために時間とったわけじゃないんだからねっ!」 「お、おぅ……」  呆気にとられてしまい、気の利いた相槌も打てない。  まぁ、確かに調停員ってヤツは双方の話を聞いて調整をする役なわけだけど、調整する以前の問題としてどっちかが明らかにオカシイケースもあるわけで……。今回は、どうやらそのタイプの案件に当たってしまったっぽい。  んで、よりによってウツギにとっちゃあ詰められたら一番刺さる部分に突っ込みを入れられたわけだ。さすがは性根の曲がった姑、と言うべきか。  「って、言い返してやりたかったー! うわぁぁーーーん!」  今度は机に突っ伏して大泣きし始めた。泣き上戸の、絡み酒? 案外、ウツギってばお酒に弱かったんだぁ。仕事の愚痴を言うから個室なのかと思いきや、多分、こっちが理由なんだな。とりあえず、オイオイ泣き続けるウツギの背中をなでながら、無言でなだめるしかなかった。
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