5人が本棚に入れています
本棚に追加
「なんかぁ、ごめんね……」
べろべろに酔っぱらって足元もおぼつかないウツギに肩を貸しながら、王宮内の宿舎まで戻ってきた。居酒屋の前で捕まえた馬車のおじさんに滅っ茶嫌な顔をされたな。しょうがないけどさぁ。
居室の扉を開けてウツギをベッドに寝かせた後、コップに水を汲んで戻る。
「気にしないで。お互い人から色んな感情ををぶつけられるような仕事してるんだから、ぶつけ返したくなる時だってあるわよ」
ベッドの端に腰かけてコップを差し出した。
「はぁー……そうか。そうよね。でも、毒を吐ききってすっきりした感じ。また臨戦態勢に戻れそう」
ウツギは起き上がってコップを受け取ると、一息に飲み干した。
「だいじょぶ? 無理しないでね」
「だいじょぶだいじょぶ」
顔の前で手をひらひらと振る。
「今日のさ……個別聴取の終了後、ババアがちょっと席外したすきに、夫に詰め寄って『次は独りで来い』って別日設けてたんだよね。ババアに言ったらこの調停は不調扱いにして裁判に上げてやるって脅してさ」
「おお。ウツギさん強い! 言われっぱなしでたまるかってんだー!」
「そうだそうだー!」
威勢よく腕を振り上げていたウツギが、急に顔色を青くして口を押えた。
「……うぷ。ごめん。トイレトイレ」
「あわわわ……」
慌ててトイレに担ぎ込む。
結局、その晩はウツギの介抱をしながらいつの間にやら爆睡していた。
最初のコメントを投稿しよう!