臨時出勤

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臨時出勤

 休暇日。 9時を過ぎても、スバルはベッドの中にいる。 都内の古い木造アパート。 4畳1間、風呂とトイレは共同だ。 朝日もまともに当たらない。 それでも、1人だけで過ごせる休暇日は、スバルにとって至福の時だ。 気のすむまで眠ったスバルは、大きく伸びをした。 窓を開ける。 景色は隣のアパートの壁しかない。境界から1メートル未満の距離に設置されており、多少息苦しさも感じる。 夏が終わりに向かい、気温が下がってきたので軽く上着を取り換えた。 冷蔵庫をあけ、ビールの缶と味付け海苔を取り出す。 味付け海苔は以前、育った児童養護施設〝みつば園〟でお世話になった職員にもらったものだ。 普段は働いた金は家賃や生活費だけで、自由に使える金は酒類にのみ使っている。 カシャ 缶ビールの開く音が狭い部屋に響き渡った時、スバルの携帯が鳴った。
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