第一章 花残月 

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「あれは、下心のある男に気をつけろって言ったの。教師に下心なんてあるわけないやろ。いい機会やから今度の先生でなれとき」  言い方は乱暴だけど、砂羽ちゃんの言う事はいつも正しい。 「でも、桜の下でナンパしてきた男とは普通に話せたんやろ。なんで?」 「わからへん。その人あんまり男っぽくなかったしかな?」 「ふーん、まっそういう事にしとこか」  砂羽ちゃんのおっさん的発言を最後に、私たちは教室にもどった。    *  放課後、美術室はいつもの時間よりはやく生徒が集まっている。私は島田さんに声をかけた。 「なんか、人多くない?」 「幽霊部員の人たちも集まったみたいや。有賀さんのために席とっといたから、座り」  ありがとうと、言いつつ最前列の席に座った。 「私、新しい先生を目の前で見たかったから、一番に来てん。かっこえーらしいわ」  なるほど、この美術室の何時にはない熱気は、そう言う事か。美術部ってこんなに部員がいたんだ。
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