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鳶色の目が私を真っすぐ見据えた。見覚えのある端正な顔立ち。桜の下の絵描きさんが私の前に立っていた。少女マンガ的に表現するなら、桜を背負って立っていた。
私はお礼もろくに言えず、うつむいた。頭の中では先生の顔と絵描きさんの顔が、ぐるぐる回っている。
顔をあげてもう一度確認。だいぶ絵描きさんと印象が違う。先生は髪が短く、メタルフレームの眼鏡をかけていた。その眼鏡の印象が強くてクールな印象をうける。服装も、よれよれのカーゴパンツなどはいている訳もなく、紺色のスーツをビシッと着こなしている。
でも、顔立ちやあの印象的な目は絶対絵描きさんだ。
おいおい、これじゃまるっきりパンを加えてぶつかったのは、転校生(この場合新任教師)のパターンそのまま。
先生は、私を見ても表情一つ変えない。まったく気付いていないようだ。なんだか悔しい。なんで、悔しいと思うのか、また頭の中がぐるぐる回って顔をふせた。
そんな、挙動不審な私をよそに、先生は自分の名前を板書して自己紹介を始めた。
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