第一章 花残月 

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「四月から、美術教師として赴任しました、真壁颯人(まかべはやと)です。美術部の顧問を担当します。クラブの活動日は前年度通り、火曜と木曜の週二日。校外写生を六月の上旬に予定しています。秋の文化祭についてはまた二学期に話し合いをしたいと思います。私からは以上です。何か質問がある人はいますか」  狼系女子達は待ってましたと、手を上げ質問をあびせた。 「先生、年齢はいくつですか?」 「九月で、二十三歳になります」 「出身地はどこですか?」 「山口です」 「兄弟はいますか?」 「いません」 「今一人暮らしですか?」 「はい」 「どこに住んでるんですか?」 「植物園の近くです」  生徒たちの熱い視線を受けながら、あけすけな質問に対して冷静に答える先生。 「今、彼女いますか?」  みんなが一番聞きたかった質問が出て、教室内は子羊の競り市に早変わりした。 「そういうかなり、個人的な質問には答えられません」  どこからか、教えてーや、かわいいーなどの黄色い声がしたが、先生は無視を決め込む。 「他に質問がないようなら、今日はこれで終了です。また火曜日に」
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