第一章 花残月 

8/35
前へ
/271ページ
次へ
            (二)美術室で突然に  始業式の次の日、私は学校へ続く坂道を歩いていた。  鴨川の東側、京滋電車の六条駅から東山に向かってのびる坂道は,通称女坂と呼ばれている。坂の突き当たりには、小学校から大学までの一貫校、京都女学院が鎮座している。そこの女子生徒達が毎朝何千人と通る事からついた名称。  おまけに、学院の制服のカラーがこげ茶色。小学生の制服からこげ茶色。ついたあだ名は、ゴキ女、もしくはイモ女。  お嬢様学校というレッテルがはられているので、多少のやっかみもはいっているだろう。なかなかシュールなネーミングだ。  ゴキブリの集団が向かう先はゴミ箱か、はたまたイモが大安売りされる市場か。  私もゴキブリの一員として、小学校から、この女だらけの坂道を上っている。                 *  昨日発表された、新しいクラスに入る。ここは外部進学希望生のクラス。  朝なのに、もう机に突っ伏して寝ている人影に近付く。 「おはよう、砂羽ちゃん」  私が声をかけると、顔をめんどくさそうに上げ私をにらんだ。 「なんや美月か、もうちょっと寝かせて」 「昨日遅くまで勉強してたん?」
/271ページ

最初のコメントを投稿しよう!

50人が本棚に入れています
本棚に追加