悪魔の行進

1/1
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ

悪魔の行進

 少女は、放浪しているうちに、大きな動物に襲われている人間を見付けた。見付けたところで、助けようという気は起きなかった。人間に対して、助け合おうという発想そのものが無かった。  だが、結果的には助けた。命の恩人だと、助けられた者は喜んだが、彼女としては自分にも危害が及びそうだから黙らせたに過ぎない。それだけなのだ。しかし、今の今まで感謝というものをされてこなかったので、違和感はあったものの悪い気はしなかった。  せっかくだからと、村へと案内された。丁重にもてなされた。そして村の者にこんなことを聞かれた。  どうやって、あの大物を一瞬で仕留めたのかと。簡単な話で纏めれば、光線を飛ばして脳天直撃だ。彼女は人間の急所は把握していた。その一つが頭だということを。  そしてそのうち、祭壇へと案内された。その祭壇は、形式が似ているものを何処かで見たことがある。見たことがないはずがない。あのようなもの。火炙りのための台。何度体を焼かれたかも分からぬ少女にはすぐに察しがついた。  この村の文化として、余所者は問答無用で、生け贄になるのだ。結婚もあったのかもしれないが、何しろ若くて適わなかったのだろう。  結局、全てを塵へと還して逃げることになった。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!