6511人が本棚に入れています
本棚に追加
「なんで?お酒トレーニング、引退したんじゃなかったの?」
「そうだよ、無理して飲むこと全然ないよ。」
心から驚いた表情の奈憂と、優しく諭してくれるちひろさんに慌てて「違います」と首を横に振る。
「勿論、前みたいに無理はしないので…!
ちょっと、飲みたい気分になった、というか。」
「ええ〜〜アーリーにバレたらどうするの!?」
「……いや、まず言わないとバレないから。」
「私は推しに嫌われたく無いから、もし聞かれたら誤魔化したりしないよ?」
「…奈憂は私とあの男どっちの味方なの。」
「推しは毎日優勝してるから比較対象にはならない。なんかごめんね。」
…謝られてしまった。あの男に、また負けた。
言葉を失っていると
「アーリーに怒られても知らないよ?」
と困った顔で、言葉を重ねられる。
“酒は飲むなよ“
確かに今日、そう忠告を受けたけれど。
「あの能面は能面だから、
怒ってもよく分かんないし。」
「……ちょっと待て。
今日は根掘り葉掘り聴きたいのに、
あんたらまさか、付き合ってからも拗れてるわけ?」
奈憂に硬い声で返事をしたのを聞いていたのか、おしぼりをこちらに渡してくれる4人テーブルの斜め前に座る亜子さんの表情が、険しさを帯びていた。
「…こ、拗れてないです。」
別に、喧嘩をしたわけでは無い。
「じゃあラブラブ?」
ラブラブ、とは。
こてん、と小首を傾げて愛らしく尋ねられて、また上手く反応を返せない。
最初のコメントを投稿しよう!