##2.「天敵たち曰くファン失格(?)の夜」

5/23
前へ
/230ページ
次へ
「なんで?お酒トレーニング、引退したんじゃなかったの?」 「そうだよ、無理して飲むこと全然ないよ。」 心から驚いた表情の奈憂と、優しく諭してくれるちひろさんに慌てて「違います」と首を横に振る。 「勿論、前みたいに無理はしないので…! ちょっと、飲みたい気分になった、というか。」 「ええ〜〜アーリーにバレたらどうするの!?」 「……いや、まず言わないとバレないから。」 「私は推しに嫌われたく無いから、もし聞かれたら誤魔化したりしないよ?」 「…奈憂は私とあの男どっちの味方なの。」 「推しは毎日優勝してるから比較対象にはならない。なんかごめんね。」 …謝られてしまった。あの男に、また負けた。 言葉を失っていると 「アーリーに怒られても知らないよ?」 と困った顔で、言葉を重ねられる。 “酒は飲むなよ“ 確かに今日、そう忠告を受けたけれど。 「あの能面は能面だから、 怒ってもよく分かんないし。」 「……ちょっと待て。 今日は根掘り葉掘り聴きたいのに、 あんたらまさか、付き合ってからも拗れてるわけ?」 奈憂に硬い声で返事をしたのを聞いていたのか、おしぼりをこちらに渡してくれる4人テーブルの斜め前に座る亜子さんの表情が、険しさを帯びていた。 「…こ、拗れてないです。」 別に、喧嘩をしたわけでは無い。 「じゃあラブラブ?」 ラブラブ、とは。 こてん、と小首を傾げて愛らしく尋ねられて、また上手く反応を返せない。
/230ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6511人が本棚に入れています
本棚に追加