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ひとしきり笑った後、須藤は真面目な顔をして再び口を開いた。
「俺さ、お前が俺の事見てるの気づいてた。最初は何見てんだ!って思ったけど、俺の事見るお前の目が優しくてさ……話がしてみたいって思ったんだ」
「…………」
「お前は……俺と実際話してみて……どう思った?」
自信がないような不安気な瞳でこちらを伺う須藤。
「俺は―――」
「――うん」
ごくりと唾を飲みこむ音が聞こえた。
あの彼が今俺がどう思ったかを気にしている。
彼にとって俺は何者でもなかったはずなのに。
彼も俺の事を好ましく思ってくれているのだろうか…?
少しの期待にドキドキと胸が高鳴る。
「俺は、あなたが悲しんでいなくてよかったと思いました」
「そか」
須藤はそれだけ言うと目を細めて俺の事を見た。
一人ベンチに座り涙を流す姿は儚く今にも消えてなくなりそうで、そんな彼に心惹かれた。
目の前にいる須藤は口は悪いし少し強引なところもあり、まるで別人のようでもある。
だけど笑顔が似合っていて、そこにいる!って感じで生命力に溢れていた。
俺は、どんな彼でも大した問題ではなかった。
彼は彼で、俺は彼の事が―――――。
「―――好き…です」
「そか」
須藤の答えはそれだけだった。
だけど、須藤の…あの涙に濡れてきらきらと輝いていた瞳が今は嬉しそうにゆらゆらと揺らめいていて、今はそれだけで充分だと思った。
-終-
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