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【コンビニ店員は異世界へ繋ぐ女神様? ぎっくり腰で異世界転移? そんなことありえるわけない】
第一話 コンビニでギックリ腰、動けねーよ
(長文注意!)
「イっッチチチ・・・・・」
ちょっと油断したらやっちまったよ・・・・・。
俺は腰をさすりながら便座に座ったまま動けない状態に陥っている。
太陽の日差しが照り付ける猛暑の中、そんなに重くないはずの粗大ごみをゴミステーションに
運び込んだ時だ。 いつもの朝、妻の白にゴミ出しを頼まれて、パンパンに詰まったゴミ袋を車に乗せ、ゴミステーションまで運んだまではよかった。
だけど、車から降ろす際に変な体勢で持ち上げた時に、腰に違和感があったのだ。
一瞬、やっちまったか? とおもいつつも、その後は腰の痛みもなく、ちょっとした違和感だけ抱え込みながらいつものように出社。 そして、定時で仕事を終え、幾分和らいだ熱波の中、帰宅途中に涼を求めてコーヒーでも買って最寄のコンビニで用を足しにトイレに座り込む。
空調がよく効いている店内ではあるが、ことトイレに至っては空調が行き渡っていないのが現実。 トイレに篭って長居をされたくない。 買うもの買ってサッサと退店してください。という、コンビニエンスストアのあけすけな陰謀丸出しなのが感じられる。
だったら、サッサとコーヒーでも買って退店しようと、
トイレットペーパーを巻き取りおしりを拭こうとしたときだ、腰に激痛が走る。
思わず、「ウホッ」とうめき声をあげてしまい、手には巻き取ったトイレットペーパーが鎮座する。
便座に座ったまま、一ミリも動くことができない。。
立つことは愚か、下げたズボンとパンツをあげることさえできない。
こんなことで、体調が悪くなったとき用の呼びだしベルを押すなんて、一生の恥だ。
しかも、おしりがふけてないままの状態。
どうしたら良い?
何時間もトイレに篭ってなんていられないし、トイレに篭っていられるのは、せいぜい、十分か二十分が、限度、それ以上はが経過すると、不審に思った店員がやってくる。 せめて、その前になんとかおしりだけでも拭いておきたい。
とにかく今はおしりだけでも拭いてズボンとパンツを履かなければ・・・・・。
だが、ちょっと状態をうごかしただけで走る激痛、トイレと言う狭い密室はほんの数分いるだけで熱が篭ってしまう。
むしむしとする熱気の中、上半身はすでにムレムレ。しかも、便座に密着しているおしりは既にベトベトな状態で気持ち悪いの一言なのだが、動けない・・・・・。 端的に言って動けない。 の一言だ。
ーーコンコンーー
俺はそんなに長時間トイレに篭ってないぞ。
人の状態も知らずに、トイレのドアの向こうから響くノックの音。
多分、トイレを使いたい人がノックしたのだろう。
もしかしたら、変なうめき声が漏れてしまい店員に聞かれたか、トイレの前を通りかかった、客が、たまたま、うめき声を聞いて心配になって、ということもある。
一番最悪なのは、その客が、店員に報告することだ。
それさえなければ、いいのだが・・・・・。
だが、それ以上に恐るべき事は、昨今の社会情勢をみればわかるように、通報社会なのだ。
なにかあれば、即通報で、おまわりさんをよばれてしまうことだ。
とりあえず、ノックをされたことで、無音のままは、まずいので、使用者がいえうことをアピールするためにノックを返す。
未だ下半身丸出しで身動きができない俺。
ちょっとでも上体を動かせば腰に激痛が走るのだ。
まさか、コンビニのトイレから救急車を呼ぶわけにいかない。
せめて、おしりを拭かせてくれ、俺は激痛に悶えながらも、いつものように片方のおしりを浮かせて、巻き取ったトイレットペーパーでおしりを拭く。
「ウホッ・・・・・うぐぅっぅぅ・・・・・」
思わず漏れてしまううめき声。
なんとか、おしりをふくだけで精一杯。
これ以上は、無理! 動けない。
ズボンとパンツをあげることも立つことすらできない。
もし、これが、ゲームの世界であれば、俺のライフは残りわずかで点滅している。
最近流行りの異世界転生もののラノベでは、トイレから異世界に召喚されると言うのが、はやりだ。
もし、この体勢のまま異世界へ召喚され、噂の女神様と御対面となったならば、なんといえばいいのだろうか?
『おめでとうございます、あなたは、この世界に召喚されました・・・・・!・・・・・って、なんて格好でしょう? ナニをされていたのですか?』
きっと、こうなるに違いない。
だけど、俺は素直に告白する。
「トイレで用を足して動けなくなりました」
と・・・・・。
赤面しながらも困惑した女神。
たぶん、召喚する人を間違えたんだな。
でも、神にまちがいはないはず。
だから、俺は当然のことながら、間髪入れずに叫ぶ!
「腰が痛くて身動きできねーんだよ! 世界でもなんでも救う勇者になってやるから、助けてくれ! 腰が痛いんだよ!」
おれにとっては、とにかく腰さえ直ればいい。
そのあとのことはそのあとで考える。
腰の痛みと格闘して、どれくらいの時間が経過したのだろう?
厚さ50ミリ前後のドア壁腰からは、ひとの往来が多く、ドア下の隙間から侵入してくる影はすぐに通りすぎる。
便座に下ろしたままのおしりが、同じ態勢なので、足首から下が痺れてくる。
なれない正座を続けているとやってくるあれだ。
こんな長時間、同じ態勢でいれば当然だよな。
これで俺は腰の痛みに加え足の痺れ、完全に動けなくなったのだった・・・・・。
トイレという密室に篭ってどのくらいの時間が経過したのだろうか? 個室内は既に熱気にに包まれていてサウナとまで行かないが、気持ち悪い蒸し暑いさだ。
トホホ・・・・・。
こうなったら、諦めて、呼びだしボタンを押して救助を求めるしかないのだろう。 しかしいい大人がこんなことで呼びだしボタンを使うなんて、明日からこのコンビニは使えなくなること大決定だ。
呼び出しを受けた店員がそれに応じて助けにくるだろう。
『ギックリ腰で動けなくなったんですか? 大変ですね。 大丈夫ですか?立てますか? あ・・・・・大丈夫ですよ。 こうやってギックリ腰で動けなくなった。 という人は珍しくないですよ。』
と、優しく言ってくれるだろう。 だけど、心の中では絶対笑っているだろうし、救助された俺が店を出た後は、店舗内で笑いの種にされるに決まっている。
もちろん、トイレでギックリ腰になって動けなくなって救助を求める人が多い、なんて言うのも方便だ。
そういったことをわかっているからこそ、救助ボタンなんて押すことなんて死んでもできやしない。
笑いの種にされて明日から後ろ指を刺されるくらいなら、ここで息を引き取って異世界転生したほうがまし。
それができないなら、死んだ方がマシ。
そういえば、こういったコンビニや公園等の公衆トイレで自殺者が発生するのは珍しくない。 と、ネットニュースで見たことがある。 海外では、割と頻繁に起きているらしく、報道はされないが国内でも年に数回は発生するとネットニュースで盛り上がっていた気もする。
まさか、この俺がそのうちの一人になるなんてな。
明日の朝刊に、香取 剣、s県s市で、ぎっくり腰を苦にトイレからでられず、自殺・・・・・。という見出しで掲載されるのであろう。
ぎっくり腰を苦に自殺って、オイッ! これを読んだ奴絶対に笑って、バクショウしながら、ネットニュースにあげるだろう。 まさに、大草原になる世界しか浮かばねぇ。
そんな大草原に、晒し首的な投下になるなんて、死んでも嫌だ。 きっと、後世に語り継がれる都市伝説になりかねない。
足の痺れも大分薄まり、床に足をつけても大丈夫な塩梅。
それでも、なんとか、立ち上がろうと、腰の位置をゆっくりと動かしてみる。腹筋に力を入れてみるが、ちょうどお尻と腰の境目が音にもこえにもならない悲鳴をあげる。
「うほッぅぅぅッ・・・・・」
口からこぼれるのはうめき声だ。
立てなくてもせめて、汚れたお尻だけは拭いておきたい。
ズキズキと警報のような痛みに耐えながら、左足に体重をかけながらふんばり便座に張り付いているおしりの片側をあげる。 便座とおしりの間にできた隙間に、手首までを差し込み、手に持っていたトイレットペーパーを肛門にあてがい、指先を動かす。
たった、これだけの動作なのに、腰の警報はだまってはくれない。
「うほッ!ウウ!ッうぐ!ッう゛!う゛!う゛!」
おしりをちょっとふくだけでも一苦労、たったこれだけのことに、うめき声がもれてしまう。
いつもだったら、トイレットペーパーを折り返して、もう一回拭いて交換して次で汚れを確認して終わりなのだが・・・・・。 はっきりいってダメだ。これ以上は限界。
狭い個室というせいも相まって室内が異様な熱気を孕み腰の痛みのせいで上半身はすでに汗でべっとり。顔に浮かんだ汗が太ももにおちる。
たかが、おしりをふくのに こんなに苦労するなんて、そろそろ潮時・・・・・。意を決して救助ボタンの使用を考えたときだ。
ーコンコンー
厚さ50ミリのドアの向こうからのノック。 トイレ待ちだろうか?早く用を済まして空けてくれ! という催促なのであろう。
だが、それは無理のな話し。 俺は気力、体力、精神力も使い果たし、もう、一歩も動けないし、立つことすらできない。
心の中で、深く深く謝罪をしていた。
「お客様、大丈夫ですか?」
厚さ50ミリの扉の向こうから響くのは、鈴の音色を思わせる桃色の声。
女性の声だ。
ほんのわずかだが、気力と精神力が回復し、残る精神力で、無理矢理に身体を立たせようと両脚に力を入れて立ち上がろうとする。
腰を浮かせて便座からおしりがテイクオフ。
だが、腰の痛みは依然引くことはなく、立ち上がろうとしたところで前のめりに倒れそうになる。
正面の壁にドン! と衝撃を響かせながら両手掌を打ち付け、そのまま墜落・・・・・。
ドスンと盛大な音を打ち立てながら便座にシリモチを着きながら墜落。
あまりの 痛みに、口から漏れる荒い息。 終った・・・・・。
視界がうっすらとかすんでくる。 個室内に充満する熱気と腰の痛み。 どこからか響くガチャガチャという不快な響きを聞きながら便座の蓋に背中を預けるとさらに痛みのコンボが腰に響き、うすれゆく意識が強制的に覚醒させられる。
石鹸を思わせる甘い香りとともに女子高の制服を思わせる赤と青のブレザーに茶色いスカート、栗色のショートカットの髪を揺らして入ってきたのは、コンビニの店員さんだ。
見た目女子高生で制服も女子高生と変わらない制服、最近流行りのラビット、正確にはラブイット。ここ数年、店舗数を急激に増やしているコンビニチェーンだ。
店内はどこにでもある、大手コンビニエンスストアと変わらないが、1番の違いは、見た目女子高生のかわいい制服が売りのコンビニエンスストアだ。
甘い香りをムンムンさせながら、ただでさえ大きな瞳をさらに大きくしながら気遣かってくる。
「お客様、大丈夫ですか?」
悲鳴に近い声で安否を問われる。
一瞬のことだが、俺にはその存在がまるで天使か女神のように見え異世界転移も、いよいよ締めたハズの鍵も強引に開けて飛び込んで誘拐される時代がきたのかとおもってしまったのだが、現実はそんなに甘くはない。
俺の今の姿といえば、下半身丸出しで汗だく、息を荒くしながら、便座の蓋によりかかる、既に変質者の域。
はっきりいって、こんな姿を晒していたら通報の対象であり、お巡りさんをよばれても間違いない状況。
もちろん俺は変質者でもないしこんな姿を晒したいわけでも、下半身を女の子に見られたいからこんな醜態を晒しているわけでは断じてない。
こんな、醜態をさらしているのにはれっきとした訳がある。
「腰が・・・・・ぎっくり腰で立てない」
頭は打ってないが、意識が朦朧とする中、息を切らしながら事情を言う。
意識が朦朧とするのは、腰の痛みと、熱気渦巻くトイレという密室のせいだ。
いや・・・・・。 だが、この状況はまさしく、異世界転移の王道パターン。 先ほどのトイレの鍵を強引に開けてそのまま誘拐して異世界へ連れて行くつもりだ。
その証拠に、俺の目の前に立つ店員は、本当にかわいい女神だ。弾けるようなバストに引き締まったボディー、スラリと延びたカモシカのような細くて健康的な足。
もしも、本当に異世界へ転移したのならば、魔王討伐のために勇者一行として旅に出る、重い装備に身を包む旅と、それに追随する戦闘。防御力を高めるためにやはり、多少の重量を覚悟しなければならない。
重量が発生するだけで腰への負担が発生する。 さらに、重い武器を振り回さなければならないから、腰への負担、は相当なものだろう。食料や快復させるための道具、そして日用品まであるならば荷物の量も重量も恐ろしくなるだろう。 各地域に点在する!街や村では、色んな人から話しを聞いておつかいをしたりなど、その中には当然、さらなる重量の荷物を運んだり、無理な態勢をしなければならない。 腰へのダメージはもはや青天井の底無し。 きっと、腰が完全に使い物にならなくなって寝たきりになるのは必死。
そんな、異世界での冒険にワクワクを期待する半面今までに、異世界へ転移した人達の事を考えれば、思わず同情してしまう。
うすれゆく意識の中、そんな益体もないことを考えながら、店員と話しをする。
「大丈夫ですか? 立てますか?歩けますか? それとも、救急車呼びますか?」
そういいながら、彼女の首は右へ左へカクンカクンと、倒れながら上目遣いで聞いてくる。
耳元が隠れるくらいのショートカットであれば首を倒す度にに揺れる髪がすごくかわいい。
下半身丸出しの状態の俺に、膝を追って中腰の態勢で視線を合わせる。
当然の事だが、俺は下半身丸だし。 店員の目が俺の下半身を見ないようにしてはいるが、何度も上下する視線は確実に、俺の下半身に興味深々だ。
年のためにいっておくが!大きすぎでもないし小さすぎでもない、一般成人のサイズだから笑われる事はないはずだ。
「ただのギックリ腰だから大丈夫です。救急車なんて呼ばないで下さい。」
朦朧とする意識の中で彼女の質問にキチンと答える。
ズキズキと痛む腰に顔をしかめていると、彼女は、
「・・・・・、他のお客様にご迷惑になるので・・・・・」
ためらいがちにそんなことをつぶやきながら、彼女は俺の正面に立ち直し、そのばでしゃがみ込む。
一瞬!なにをするんだ?という疑問をよそに、足首までずりさげっぱなしのズボンとパンツを上にあげる。
膝まではかされたのはいい。
しかしその次だ、
彼女はそのまま下半身に抱き着くように頭をツッコミ、腰に手をまわす。
「うちのおじいちゃんもよくトイレに座ったまま立ち上がれなくなって・・・・・いつもこうやってるんですけど、痛かったらほめんなさい」
おなかに彼女の頭頂部が押し当てられる。 唯一動かせる首を動かすとすぐ目の前には手入れが行き届いている、細くて柔らかい栗色の髪の毛が揺れている。
当然だが腰に手を回されている時点で腰へのダメージが容赦なく襲い掛かっている。
さらに、彼女の頭がおなかにおしつけられることで、気を失いそうになる痛みが発生する。 思わずうめき声をあげてしまったが、正直そんな痛みはそよ風のようなもの。 客観的に見てヤバイ絵面。
しかも、体型が良いこともあって、下半身にあたる柔らかい感触。
一瞬にして、下半身に、血液が集中するのだが、こんな状態では、集中するはずの血液も即無散。
代わりに押し付けられた頭から放たれる香りが、痛みが現実から意識を遠ざける。
ある意味、本当に天国。 否、本当に異世界の女神がそこにいるかのような感触だ。
しかし、! っ次の瞬間、その異世界の女神は、容赦なくおれを地獄・・・・・、現実へと叩き落とす。
彼女の頭がおなかにおしあてられたまま、上体を持ち上げられ、無理矢理立たせられる。 想像を絶する痛みに、一際高いうめき声が口からうこぼれ出す。
あまりの痛みに上半身の力が抜け、彼女の身体に覆いかぶさるようにぐったりする。
華奢な彼女の体格とダラリと伸びた掌が丸みを帯びたおしりに触れる。当然、この態勢で彼女のおしりに手がふれてしまうのは仕方がない。 しかし、この隙に便乗して、どさくさ紛れにおしりを触りつづけるのは、エヌジーだ。 既に気を失いかけている俺は理性の力で、おしりから、掌を離脱させる。
彼女はそのまま、お腹に頭を押し付けながら器用にズボンとパンツを腰まであげると、ベルトまで締めてくれた。
彼女がお腹に頭を押し付けたのは、俺をたちあがらせるのと同時に膝まで上がったていた、ずぼんをあげるためであったのだ。
下心丸だしの男性であれば、お尻に手を当てたまま動かさないのだろうし、女の子に下半身を見られて喜ぶのであろうが、俺は逆に小汚くて見苦しいものを見させてしまって申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
本当なら、『スイマセン、スイマセン・・・・・』と声に出してあやまりたいのだが、あまりの痛みに気を失いかけていて、それどころじゃなかった。
無理矢理に立たせられたまま、かのじょはダラリと伸びた腕を自分の肩に回してトイレにきびすを返す。
なんとか、意識を保ちながら、自分がされたことを理解し腰の痛みにたえながら、脚を動かす。
こうしておれは薄れゆく意識の中、彼女に介抱されながら、異世界へ連れて行かれるのであろう・・・・・。
黄色い常夜灯の明かりがピンク色の天井を照らしている。向かいの壁にはかわいらしい動物のぬいぐるみが山となっている。
どことなく柑橘系の香りが鼻腔をくすぐり、ここが女の子の部屋であるのがわかる。
背中を包むのは柔らかく包み込むとは言えないが、一枚の薄い毛布が足先から胸元までを覆っている。
視界の高さからいって、ベッドのうえだ。
「ここは?」
山のように包まれたぬいぐるみの住人以外の人の気配がしない。
腰の痛みは、といれに座っていたときよりも随分楽になったきがするのだが、それでも、からだを起こそうとひじをついて上体を起こそうとしたのだが、沈静化していた腰の痛みが電気が走るよにうにおそいかかってくる。
声にならないうめき声をあげながら、起き上がるのを諦めて再び上体をベッドに預ける。
腰から上の半身が、バフンという音とともに柔らかい感触にうけとめられる。
そんなに高い位置から半身をおとしたわけではないが、痛みの衝撃で勢いついてしまったのだ。
当然、その衝撃でさらに腰への追加ダメージがコンボとなって襲いかかってくる。
起き上がるのを諦めて、現実からの逃避行。
どうやら、俺はとうとう 本当に異世界へ招待されてしまうらしい。
(世界でもなんでも救う勇者になってやるから、助けてくれ! 腰が痛いんだよ!)と女神に言った手前だ。
ならば、異世界に旅立つ前の特典を事前にかんがえておかなければならない。
切れないものは存在しない異世界では定番の神器か、それとも絶対防御の神器か?
いやいやいや・・・・・。
そんな重量系の神器なんて腰に負担がかかってしまう。
だったらば、チートと呼ばれる特殊能力、異脳や権能、超能力。それとも、誰にも負けない、一部カンストしたステータス。 ステータスなら、腰に負担はかからないだろう、だがそのステータスを持つことで、体を動かし、腰への負担がかかってしまう。
いっそのこと、痛みを全く感じない体質とかどうだろう?
だめだ、痛みを感じない イコール無茶しすぎて自分の身体の異常を察知できなくて、気付いたらライフがゼロで死んでいた。 そう考えると痛みを感じない体質というのは、逆にいえば死亡フラグだ。
そういえば、とある異世界転生ものでは、その女神を連れていくという、ぶっ飛んだ話もあったことを思い出していたときだ。
ーーコンコンーー
壁にある、ピンク色の壁に据付けられている茶色の木製のドアがノックされ、「おかげんいかがですか?」
と、返事を返す時間もなくかかり声がかかり、学校の制服のようなユニフォームを着たラビットの店員。
栗色のショートカットに、桃色の声が響き渡り、俺は現実き引き戻されておもいだす。
そうだ、俺はトイレの中で彼女に立たされて・・・・・。
イチモツをしっかりとみられたんだ。
あのあと、彼女の肩を借りて、おれは、意識を手放したんだ・・・・・。
「ぎっくり腰ですか?」
栗色に染めたのであろう耳元までのショートカットの女の。 瞳が大きくて体格のいい女のコ、いままでに何が起きたのか、忘れもしない。
トイレで、見られ・・・・・なにをって?
俺の×××だ。 タックルされて、薄れ行く意識の中、
肩を担がれ、運ばれた。
忘れもしない、手の平の感触は覚えている。
制服の滑らかな肌触りの上から感じた熱を帯びた大きくて柔らかくて、堂々と触ってはいけない彼女の大きくて柔らかくて、堂々と触ってはいけない彼女の胸。
保身のために言うが、消して嫌らしい意味で触ってしまったんじゃない。
腰の痛みで思わずそこにあるものを掴んでしまっただけで、決して意図的に、悪意や性的な意味で掴んだわけじゃない。
それに、あのときの俺はほとんど意識がなかったんだ。
と・・・・・いうことは、・・・・・ここで気を失ってた俺は、まさか! だとは思うが、知らずの内にここへ運ばれたのは、通報されてお巡りさんがくるまでの間の軟禁。
俺の人生終った。
ここで終わるくらいなら、異世界へ転移させられた方がまし。
さぁ、異世界転移の女神よ、俺を異世界へ! かすかにのこる、彼女の胸の感触を思いだしながら、現世での最期を惜しむ。
「うちのおばあちゃんが、整体やってて、あたしもよく手伝わされて、いつのまにか色んな技を伝授されてるんです。 ちょっとだけ俯うつぶせになってもらえませんか。」
正直なところ話しの内容についていけない。
おばあちゃん直伝の技で、うつぶせに? 一体どういうことだろう?
すまん、思考に理解が追いつかずにフリーズ。
いや、それ以前に俺の腰、が痛すぎて、仰向け状態からうつぶせになれなんて、できないのだが、俺は、痛みを堪えて起き上がり 「ウグッ!」ベッドの上で、うめき声をあげながら身体を回転させる。
「アグワァ!」
ダメだ、完全に俺の腰はイカれてやがる。
たったこれだけの所作で、悲鳴を上げる腰、ふだんであれば、よっこらせ、・・・・・・。と言わなくてもいいようなことをいいながらの容易い所作であるはずなのに。
彼女に俯せをになるように指示されると、俺は、彼女の指示に従い、俯せになる。
なにをされるのか、不安な面持ちだ。 ここで、彼女の指示に従わずにいれば、もしかしたら彼女の機嫌を損ねてしまい通報されてしまうのかもしれないし、もしかしたらこの現実世界におさらばして、何のスキルももらえない、特典ももらえないまま、異世界へと転移させられてしまうのかもしれない。
特典もスキルももらえないままでの異世界転移それはつまり、ぎっくりごしで腰を痛めたままでの転移。
もし、そうなってしまったら、俺は異世界でずっと起き上がれないままの寝たきり確定になってしまう。
せめて異世界へ転移させられるにであれば、スキルやアイテムはもらえなくてもいい。腰の痛みさえなければなんとかなる。
異世界転移だなんてありえない、現実の世界のゲンジツ・・・・・。
背中に感じるのは小さなてのひらから伝わる、優しい温もりと、そのてのひらが、背中から腰までを優しくさすってくる。
腰の痛みが、すこしずつ和らいでいく。
まさに、天使が俺の背中に癒しのマホウをかけてくれているかのようだ。
もちろん、このてのひらの主が、彼女の手だというのは、わかっている。
彼女は、北斗整骨院の娘さんで、北斗まなみと言う名前だ。
小さな頃から祖母の経営する整骨院で、お手伝いをしながら、あらゆる手技を学び、吸収し将来はこの、北斗整骨院を継承するのが夢で、今は専門学校へ通いながら、ラビットのアルバイトとして働いているそうだ。
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