北の大地

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「そうだわ。なずなちゃん、その服ではダメね」 「あ、、、」 そういえばこの制服を気にかけてくれた彼、何してるのかな、、、? 時代に合わない服、露出、、、 恥ずかしそうにしていた彼の顔が急に浮かんで頭から離れなかった。 見ず知らずの、初めて会った私を気にかけてくれて優しくしてくれた人。 「私のもんぺがあるから手直ししましょうね。」 「何から何までありがとうございます。なのに私は何もお返しできなくて、、、」 「いいのよ。服がちゃんとしたら畑仕事を手伝ってくれないかしら?それだけで十分」 チエさんは本当に素敵な人だ。 この時代の人はみんなこんなに優しいのかな、、、? もんぺが出来るまでの間、私は部屋の中を片付けたりチエさんとの会話を楽しんだ。そういえばおばあちゃんも裁縫が得意で私に教えてくれた。 でも私は不器用でなかなか上手くはできなかったっけ、、、 思い出の引き出しはふとした瞬間に開かれる。 そしてその中からたくさんの思い出をそっと引き出しては私の胸の中にまたしまっていくんだね。
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