北の大地

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「あら、柊【しゅう⠀】ちゃん」 柊、、、ちゃん この人は柊っていう名前なんだ。 「チエさん、彼女は、、、」 「この子ね、なずなちゃんっていうの。集落の近くで会って今は私の家に居るのよ。」 「そうだったのか。」 この前とは違って学ランのような服を着ている。相変わらず凛々しい顔をしていて真っ直ぐな目で私を見ている。 ドクン、、、 あれ?何だろう、、、 目が合うと感じた事のない胸の高鳴りが聞こえた。 緊張感とは少し違うけれどそれとよく似たような感覚だ。 「チエさん、食料は大丈夫ですか?」 「大丈夫よ。家はこの通り畑もあるし今はまだ配給だってあるから」 「そうですか。何か困ったことがあったらいつでも声をかけてくださいね」 好青年、、、 この言葉はきっと彼みたいな人の為にあるんだろうな。そう思った。 「君はなぜここに?」 「、、、私には帰る家がないし家族もいないんです、、、それで路頭に迷っているところをチエさんが助けてくれました。」 「そうだったのか。すまなかった。あの時俺が君にきちんと事情を聞くべきだった。」 手を差し伸べてくれただけでも有難いのにそこまで気にかけてくれるんだ、、、なぜだか凄く嬉しかった。 「あら?柊ちゃんはなずなちゃんに会っていたのね。」 「はい。でも俺は途中で別れてしまって。申し訳ないです。」 「何を謝るの?なずなちゃんに会えたのよ。むしろ感謝したいくらいよ」 ああ、2人ともなんて優しいの。 私はまた溢れだしてきた感情に溺れてしまいそうだ。 あたたかい涙が流れていく、、、 「なずなちゃん、どうしたの?大丈夫?」 「大丈夫です、、、お2人が優しすぎて、、、私、、、」 また困らせてしまった、、、 でも止められなかったの。ここで流す涙はあたたかいものばかりだ。 涙ですら優しいんだ、、、
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