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「こ、こんにちは」 柊さんの家について声を掛けた。 「はい」 出てきたのは片足を引きずりながらゆっくりと歩く男の人だった。 これが柊さんのお父さんかな? 「あの、、、私、チエさんのお家でお世話になっている者です。チエさんが私の紹介もかねて夕ご飯にお父さんと柊さんを招待したいって、、、」 「ああ!君がそうか。柊から聞いたよ。可愛らしいお嬢さんだね」 柊さんのお父さんがニコリと笑って言った。 私はその言葉がお世辞だとしても嬉しくて、恥ずかしくて顔を赤らめておどおどとしてしまった。 「あ、、、あの、、、」 「ははは!本当に可愛らしいなぁ。家は男しかいないから君がそうしているだけで華やぐよ」 柊さんのお父さんは柊さんとは対照的に気さくで柔らかい物腰だ。 「親父、何をしてるんだ?」 後ろから聞こえてきた声に胸が苦しくなった。 柊さん、、、 「なずな?どうした?」 「あ、、、えっと、、、」 上手く言葉にならない。どうしたんだろう、、、 「チエさんがな、なずなちゃんの紹介をかねて夕飯に招待したいって言ってくれているそうだ。せっかくだから厚意に甘えるとしようや」 「そうだったのか。立ち話もなんだし少し寄っていくか?」 柊さんの家に?私が、、、? 変な緊張感でおかしくなりそうだ。 こんな状態では無理だよ、、、 「なずな?」 「ご、ごめんなさい!チエさんのお手伝いがあるから帰りますっ!」 「あ、おいっ!」 ダメだ、、、 後先を考えることが出来ずにただ逃げ出してしまった。感じ悪かったよね?最悪だ。 でも、、、 耐えられなかった。バクバク鳴り響く心臓も、息が詰まりそうなほどの胸の苦しさも、何もかもが初めてだし何が起こっているのか分からなくて。私の心がまるで自分のものでは無いようだ。いうことをきかない感情がもどかしくてどうにかなってしまいそうだ。頭の中が、心が、柊さんで埋め尽くされてパンクしてしまいそう。
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