「スイッチ」※

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「――――……とりあえず……」 「……ん?」 「……オレが啓介抱くのは、絶対無理……」 「……あ、そう」  啓介がめちゃくちゃ苦笑いしてる気配がする。 「……まあオレも……オレが雅己を抱きたい、けど」 「されたいなら、他いって」 「……せやからそうやなくて……もうこっち向けや」  不意に、腕が絡んできて、抱き寄せられてしまった。  啓介の腕の中で、至近距離から、む、と睨まれる。  くそ。顔しばらく見たくなかったのに。 「女抱けとか、他いけとか……もう言うなて」 「――――……」 「オレがほんまにどっか行ったら、嫌やろ?」 「――――……」 「ええの? お前抱くみたいに、他の奴抱いても、平気?」 「――――……」  答えないでいると、唇が塞がれた。 「……っ」  舌が絡んできて、絡め取られて。  また濃厚なキスをしたいだけして、 ゆっくり離される。 「――――……こんな風に誰かとキスしても、平気?」 「……っ……」  平気。  ――――……じゃない。   ……嫌だ、無理。 気持ち悪い。   「他の奴と、こんな風にしたら、もう二度とオレにはすんなよな」 「――――……」  ぷ、と笑う、啓介。 「素直やないなー、ほんまに」  笑いながら、ぎゅー、と抱き締められる。 「他の奴とはしないで、て可愛く言えばええのに」 「――――……」 「でも、可愛ぇ」  ちゅ、とまた、キスされる。  ……可愛くないし。  意味わかんねえし。  ……ああもう、ちゅーちゅーすんなっつの。  顔や頬や髪や、なんか色んなとこに口づけてくる啓介を、押しのける。  もうほんと。バカ。 ◇ ◇ ◇ ◇  昨日はあのまま、眠った。  で。  起きてみれば、まだ、腕の中。  男のオレ、抱き締めて寝て、何が楽しいんだろう。  ……もともと男が好きな奴なら、分かるんだけど。  もともとは女が好きな奴なのに、オレを抱いて、何が楽しいんだろ。  ……全然意味が分からない。  でもって……。  やっぱり一番意味が分からないのは、オレ。  ――――……なんで、啓介が他の奴抱くのが、嫌なんだ。  他の奴と、キスするのも、嫌だし。  なんなら、一緒に話してるのを見るのも、少し、嫌。  ――――……。  毎週毎週、一緒に週末過ごして。  ……なんなら平日まで、一緒に過ごして。  オレって。  ――――……こいつのこと、好き、になっちゃったのかな……?  いやいや。そんなはずは……。  ……ていうか、もともと、好きではあったから。  友達として、大好きだったからなあ……。  一緒にいるのが楽しいのは、昔から。  優しくて。面白かったし。声も話し方も好きだった。  頭良くて、運動もできて、一緒に居ると楽しくて。  とにかく居心地が良すぎる位で。  クラスも違うのに、よく啓介の所に遊びに行ってたのを思い出す。  啓介の笑顔、好きで。  ――――……すごく、好きで。  だから、元々、大好き、ではあるんだけど。  その大好きと、今の状態で言う大好きは、全く違う気がする。  ――――……オレ、ほんと、最後何も考えられなくなって、「付き合えばいいんだろ」って、言っちゃったけど。  でもって……。  付き合うってなんだ??と思ってた夜。  いきなり、あれよあれよと、そういう事になった。  ほぼ、今と同じ。  啓介がうますぎて。キスが気持ちよすぎて。  頭、働かないまま、訳も分からないまま、  体だけ先に、繋いでしまった、ような。  ……その時から啓介のこと、オレの中で、「ケダモノ」呼ばわりする事になったんだけど。    ……だって、全然よく分かんない間に。  オレ、全部初めてだったのに。もうほんと、びっくりな位、うますぎて。  その手の中に落ちた感じがして。悔しすぎて。  ……だから、オレ、絶対に、これ以上は思う通りになんかなってやるもんか、と、その時思ったのに。  可愛いとか。好きとか。  ――――…お前だけ、とか。  いつも、いつも、言ってくる。    モテるくせに。  今迄、いろんな女の子と、付き合ってた、くせに。    ――――…オレは、絶対、お前のこと、  そーいう意味では好きになんないって、反発、してしまう部分もある。  気持ちいいことに、ちょっと慣れて来ちゃってるだけで。  絶対絶対、そんな意味で、好きなんかじゃないんだからな。  なんて、思って、心の中で、思い切り抵抗してるんだけど。  ――――……もう、分からなくなってくる。  
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