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歩いて店に辿り着くと、啓介のバイクを発見。
店員に通されて、広い座敷の中に入ると、啓介と若菜が並んで座っていた。
まあ、先に行っといて、この2人が離れて席に着いてたら、それこそおかしいから、当然なんだけど。
敢えて、そちらには座らないで、長机の、啓介と完全に反対側の端。しかも見えないように、啓介側に座った。
こうすれば、啓介の事は、見えない。
我ながら、良い考え。
見ると何だかムカついてしまうものは、見ないに限る。
オレの周りに、座りだす皆。
まあな。……啓介を、若菜が好きな事を知ってるなら、その啓介と若菜が2人で並んで楽しそうに話してる所に、座るアホはなかなか居ない。オレ側の席からどんどん埋まっていき、その内啓介達の周りも埋まる。それだけでおさまりきらず、結局後ろの長机も、埋めていく事になった。
元々誰が声かけたんだか知らないが、今日の集合は、大学1年、高校3年、高校2年にかかったものだったらしく。
皆が揃って、食事が並んだ所で、皆が口々に言い出した。
「じゃあ、元キャプテンー」
「啓介ー、挨拶!」
突然呼ばれた啓介が、はいはい、と言った風に、立ち上がる。
ち。見えてしまった。
見ないようにしてたのに。
「えー……久しぶりに学校違う奴や、後輩達にも会えて、楽しかったわ。オレら抜けて気合抜けてるか思たけど、動きめっちゃ良かったし。これからも頑張れや」
ゆるい感じで褒められて、下の皆が喜んで、「はーい!」と返事してる。
なんか余裕で挨拶を終えてるのもちょっとムカつく。
「じゃあ、現キャプテン、良、ご挨拶ー!」
オレは、すぐ後ろに座ってた良を振り返る。こっちは、少し緊張気味に立ち上がる。
良は可愛いな。うん。 やっぱり普通はこんないきなり指名されたらそうなるよな。うん。
「はい。えーと……。先輩方、今日はありがとうございました。 久しぶりに一緒にバスケできて、嬉しかったです。 特に、雅己先輩とそのチームの皆さんの、相変わらずの無茶な走りに感動しました!」
「無茶って言うなー」
つい突っ込みを入れると、周りが笑う。
こういう雰囲気、懐かしい。楽しいな。
「じゃあ……とりあえず、食事たべましょう、いただきます!」
「いただきまーす!」
皆でそれぞれ言って、ご飯を食べ始める。
大学に入ってから、このメンバーで会うの、久しぶり。
「雅己先輩!」
近くに座った、後輩の女子マネ達が、話しかけてくる。
「雅己先輩、彼女出来ちゃいました?」
「……出来ちゃいましたって何?」
微妙な言い方に、笑いながら答えると。
「何となく。 先輩が彼女命とかなってたら、なんか寂しいから」
「何それ……?」
苦笑い。
……うーん、その予定だったんだけど。
何故か、出来てない。
まさか啓介となんて言えないし。
でも、高校も居なかったの皆が知ってるので、まだ全然居ないっていうのも、何だかちょっとな…。
啓介と居なかったら、多分、割と仲良くなってた子達の誰かと、そうなってたんじゃないかなーと、思うのに。
てことで、ちょっと意味深に。
「……うーん、居るような、居ないような……」
と答えてみた。
「えー、何々、先輩、何ですか、それ?」
「どういう意味ですかー?」
「うーん……いや……うーん。内緒で」
要たちがクスクス笑う。
「お前は啓介と居すぎなんだよ」
「そうそう。 啓介と居なければすぐできるのに」
「つーか、啓介はオレと居ても、全然彼女居たからね……」
皆の微妙なフォローにそう返すと、皆、ぴた、と止まって、あははー、と笑い出す。
「先輩、もし、私が大学生になっても、まだ彼女居なかったら、 私と付き合って下さいよー」
「え」
突然の、沙希の告白に、周りが楽しそうに騒ぎだす。
「本気で言ってんの、沙希ちゃん?」
「はい。だって、先輩、可愛いんですもん。カッコいいのに可愛いとかって、最高」
「つか、今じゃないの?」
「私これから受験なので、無理です」
「じゃあ…… 来年、考えよっか」
クスクス笑いながら、本気なんだか冗談なんだか分からない話に、これまた適当に応えると。
「私、わりと本気なんで、覚えておいて下さいね?」
沙希がそんな風に言うから、周りがまたわっと湧く。
「若菜が啓介先輩と付き合って、私が雅己先輩と付き合えたら、すごい楽しくダブルデートできそうですし」
……ぴく。
啓介が若菜と付き合って、ね。
――――……。
……向こうは見ない見ない。
腹立つから。
「まあ、とりあえず、受験頑張ってね」
そんな風に言ってその話を終わらせてると、隣に居た要が可笑しそうに笑う。
「何で彼女できないのか、ほんと不思議、お前」
「……何ででしょ」
「絶対啓介とばっか居るからだろ。 少し離れて、女子と居てみたら?」
確かに、啓介のせいだけど。
……要たちが言ってる意味とはちょっと違う……。
でもなー。
もー。
――――……なんだかなー。
……オレ、何で今、啓介と離れてるんだっけ。
いつもほんとに一緒なのに。
あ、そっか。
チームが 離れちゃって、その隙に啓介が若菜と楽しそうにしてたからだ。
なんだかな。
モヤモヤする。
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