「バスケの皆と」

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 ぎゅ、と目をつむる。  ほんとに――――……バカ、啓介。 「……触らすなや」 「……え??」 「――――……足。なんで触らすん」 「――――……あ……まっさーじ??」  急に言われて、色々考えてみたけど、それしか思い当たらない。 「――――……しかも、なんで泣かされてんのや」 「……痛かったから……」 「……お前が他の奴に泣かされてんの、我慢できん」 「――――……」  えー……と。  何、さっきのマッサージで、こんなに不機嫌なの……?  ぷ、と笑ってしまう。  瞬間、じろ、と睨まれた。 「笑い事やないからな……エロイ顔して泣くな言うとるんやで?」 「……っ何言ってんの、お前、バカじゃないの、そんな顔してねーし」 「しとったし」 「お前以外の誰も、そんな風に見ねえよ!」 「……っアホなんか、お前」 「アホはお前だ!」  外に聞こえたら困るという、そういう気持ちはかろうじて働いているので、小声で怒鳴り合う。 「つか、あんな痛いマッサージに、そんな顔絶対してねえし」 「――――……とにかく、触らすな。あと、お前も触んなや」 「……っ触ってねえし」 「……お前ほんまに、触っても触られてもないて、思うてる?」 「……思ってるし」  ……100歩譲って、マッサージは触らせたとしたって。……オレが一体誰にどう触ったって言うんだよ?  むー、として、睨んでると、啓介が、はあ、とため息を付いた。 「――――……雅己、とにかく、オレんち来ないんなら、もう、オレ」 「――――……」 「……お前、見ない事にするから」 「え」  何それ。  見ないって。  ……さっきオレが、啓介の事、見ないようにしてたのと一緒?  ムカつくものは見ないって、事??  オレの事が、見たくないほど、むかつくって事? 「……オレと付き合い続けたいなら、来いや」 「――――……何だよ、それ……」  ……むかつく。  むかつく。  むかつきすぎる。  いくら、触ったとか触らせたとか、啓介が不機嫌なんだとしたって。  ……そんな言い方、ない。  なに、じゃあ、今日、お前んとこ行かなかったら、  ……オレ達、付き合い、終わるわけ?  ――――……しかも 何、その言い方だと、オレが、お前と付き合い続けたがってるみたいな。    むかつく。 「……っ……オレ、行かない」 「――――……」  そんなんで、終わるなら、もうオレ、行かない。 「……分かった。もう知らん。勝手にせえや」  鍵を開けて、出ていってしまった。  そのまま、ムカつきながら、鍵をかけた。 「……なんなんだよ。もう全然意味が分かんねーし……」  今日行かなかったら、どうなんの。  ……オレの事なんか見ないし、  ……オレと続けないって、言ったんだよな、あいつ。  ――――……あんな顔、初めて見たかも……。  普段怒んないから。  ……なんか、胸が、ギシギシする。  つか……。  やっぱり。  そんなもんて事じゃん。  言ってる事も、全部意味わかんねえし。  脚が痛いからってマッサージしてもらうのの何が悪いんだ。  しかも相手が女の子だとちょっとまずいかなと思うけど、相手、男。  後輩の、男。  ――――……エロい事なんか、何も考えてねえし。  ただ痛かっただけだし。  なんだよ。足つぼマッサージて普通に店あるじゃん。あれ行って、泣いてたら、エロいのかよ。 そんな訳ないじゃん。  もうマジ、意味わかんない。  触ってもないし、触られてもないよな?   完全に濡れ衣だし。  何なの、あいつ。  なに、それでオレと、別れるっつーの。  ――――……やっぱり、あいつの告白なんか、受けなきゃよかった。  親友で居れば良かった。  啓介のバカ。  バカバカバカバカバカバカバカ。    
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