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二人で首をかしげながら継ぎの間へ行った。
継ぎの間の入り口の扉の前で、護衛の近衛兵が四、五人ほど控えている。
「何これ、どうしたの?」
びっくりしてツキシロがつぶやくと、護衛の一人が口を開いた。
「中に入ってよいといわれたのが二名だったので、我々はここに控えております」
「マジか!」
いよいよ不審になって、そっと継ぎの間へ入室する。
継ぎの間の中央には、ご丁寧にゴザが敷いてあって、両脇に護衛が控えていた。ゴザの上には、納屋の穀物袋の方がきれいだろと思うくらい薄汚れた麻袋に枯葉をあちこち付けたのが置いてあった。
いや、足生えてるから、これが客人か。
辺りには、雨上がりの森の中のようなにおいが充満している。それだけでもちょっと異様なのに、麻袋ニンゲンの肩と思しきあたりに、立派な青大将ほどもあるヘビがぐるりととぐろを巻いて鎮座していた。
自分の名前を出して訪れるってことは、少なくとも知り合いかその知り合いくらいなのだろうが、ツキシロはその風体を見ても今一ピンとこなかった。
「へー、シロってホントに双子だったんだな」
麻袋がしゃべった。
「……その声…………ザクロ?」
ツキシロが眉根を寄せて記憶をたどる。麻袋から手がはえた。
「よ! 久しぶり!」
「うっわ! どぇっ! きったなっ! まず風呂入れ! 風呂!」
ツキシロが叫ぶと、麻袋は問答無用で護衛にひったてられ、森外れの小川に突き落とされた。
「久々に使う我が能力の使い道が、ボロ雑巾を消すことだとは思いもよらなかったよ」
衝立の向こうで四度目の洗浄作業に入っているザクロに悪態をつきながら、ツキシロが新しい衣装を持ってきた。ハイシロは、とぐろをまいて大人しくしているヘビに興味津々で、触ったり眺めたりしている。
「いやぁ、普段、金なんか使わない生活してるからさ、大陸へ渡る船賃ですってんてんになっちゃって、ここに辿り着くまでは得意のサバイバル生活よ」
「相変わらずワイルドなヤツだなぁ」
小川であらかた泥を落とし、伸び放題だった髪と髭をサッパリと整えてから、外水道で黒ずんだ垢を落として、ようやっと湯の出る風呂へと突っ込んだ。どんだけ風雨にさらされた生活を送っていたのか……。
「にしても、なんでこっちに来たんだ? こんな寒いとこ嫌いだろ?」
「しょうがねんだよ。コハクに出会っちゃったから」
「コハク?」
「我のことだ」
ヘビが、しゃべった!
「……ん? どういうことだ?」
「なんでしゃべれるの?」
双子がほぼ同時に疑問の声を上げると、衝立の向こうにいたザクロがひょいと体をのぞかせた。
「ああ、そいつな……」
「きゃぁぁぁあぁ!」
「ば! ばかっ! 真っ裸で出てくんなっ!」
いや、オレは気にしないんだけど、とぶつくさ言いながらザクロは引っ込んだ。ツキシロが振り返ると、ハイシロが耳まで真っ赤になってた。
見ちゃったな、あれは。
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