60人が本棚に入れています
本棚に追加
小人さん語り<手紙編>
キッカケは、些細なことだった。
回収してきた箱の中にあった、二つ折りの紙だ。
容器をそのまま入れて返してくる奴は、存外多い。ついでとばかりに紙コップやら味噌汁の空袋やら、もっとひどいとタバコの空箱なんかも入っているので、これもそのたぐいだと、紺野瑞貴は考えた。
ただ、それにしては綺麗に折り畳まれていることが気になり、開いてみることにする。
クレームだったら、対処が必要だ。無視はできない。
『カレー、おいしかったです。これ、ラー油が入ってたりしますか?(違ってたらすみません)』
真っ白なメモ用紙に書かれた内容に、瞠目する。
いままで、一発で言い当てられたことはなかった隠し味。中華料理店を営んでいた祖父が作っていた、メニューには載せていないカレーである。
働いている店の賄いとして作っていたものを店主が気に入って、今回の弁当メニューにも採用されたのだが、まさか顧客に見抜かれるとは思わなかった。
箱の側面に貼られた名前を確認する。
会社名と、六桁の社員番号。その隣に「今野み」とある。
今野。
コンノ。
……まさか、コンノミヅキ?
最初のコメントを投稿しよう!