社員食堂の小人さんと秘密のお手紙

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 世の中ではリモートワークがもてはやされているが、美月の会社には縁のない体制だ。  それでいて中途半端に世情を鑑みるものだから、社員は振り回されている。  先月、ついに社内食堂が停止した。  これについては、一部の社員にも問題はあったと思われる。  食事中は会話はするな、というお達しがあったにもかかわらず、対面に座って会話をするバカが何人もいたせいだ。  たまたま通りかかった専務が目撃し、怒髪天。  極端なことで有名な専務は、「食堂があるから駄目なのだ」とばかりに停止を通達し、社内を蒼然とさせた。  この会社は食堂利用率が高い。都心と違い、昼休みに気軽に食事へ行ける店が存在しないせいだろう。  弁当を持参する社員もいるが、美月はもっぱら食堂派だったものだから、焦ってしまう。二十六歳にもなって情けない話だが、料理は得意ではない。  未婚の男性社員は特に食堂を頼りにしていたものだから、当然不満は続出。  また、食堂がなくなったせいなのか、付近のコンビニからは弁当の類が消える事態となった。惣菜パンも品切れとなりカップラーメンも品薄と化した。コンビニの店長はウハウハに違いない。  社員の食糧事情は切迫していた。  そこに登場したのが、弁当サービスである。
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