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「ーーーっ!重いな、畜生……!」
篠崎は何とか紫雨を自分のマンションに連れ帰ると、部屋の中に引きずり、ソファの上にひっくり返した。
「こいつ、こんなに細いのに……!やっぱり酔っ払いが重いってホントだな…」
言いながらすぐ隣に腰かけ、上着を脱ぐとネクタイを緩めた。
「全く。傷ついた野良猫を連れ帰った気分だ…」
言いながら背もたれに肘をつき、最近はほとんど目も合わせなくなった同期の男を見下ろす。
明るい茶色の髪の毛がはらりと落ちて、白い顔があらわになる。
大きい目に生えている長い睫毛。
「————睫毛まで茶色いわ、こいつ」
初めて気づき篠崎はその顔に寄った。
確かに黒色ではなく、茶色の睫毛だ。
「———こいつって、どっかの血が混じってんのかな」
普段はじろじろ見られない同期を、ここぞとばかりに見つめる。
「付け根も黒くねえ」
言いながら髪をかき上げると、
「………んん…」
紫雨は妙に色っぽい声を出した。
「————おい」
その悩ましい声に思わず頭をはたく。
しかし彼は少し身を縮こませただけだった。
「————バカらし。風呂でも入ろ」
篠崎は立ち上がると、バスルームへと歩いていった。
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