化け猫のお遊び

3/5
139人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
「ーーーっ!重いな、畜生……!」 篠崎は何とか紫雨を自分のマンションに連れ帰ると、部屋の中に引きずり、ソファの上にひっくり返した。 「こいつ、こんなに細いのに……!やっぱり酔っ払いが重いってホントだな…」 言いながらすぐ隣に腰かけ、上着を脱ぐとネクタイを緩めた。 「全く。傷ついた野良猫を連れ帰った気分だ…」 言いながら背もたれに肘をつき、最近はほとんど目も合わせなくなった同期の男を見下ろす。 明るい茶色の髪の毛がはらりと落ちて、白い顔があらわになる。 大きい目に生えている長い睫毛。 「————睫毛まで茶色いわ、こいつ」 初めて気づき篠崎はその顔に寄った。 確かに黒色ではなく、茶色の睫毛だ。 「———こいつって、どっかの血が混じってんのかな」 普段はじろじろ見られない同期を、ここぞとばかりに見つめる。 「付け根も黒くねえ」 言いながら髪をかき上げると、 「………んん…」 紫雨は妙に色っぽい声を出した。 「————おい」 その悩ましい声に思わず頭をはたく。 しかし彼は少し身を縮こませただけだった。 「————バカらし。風呂でも入ろ」 篠崎は立ち上がると、バスルームへと歩いていった。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!