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「お前がきにするようなことじゃねえよ、安心しな」 頭をなでてやると花緒はさらに瞳をうるうるとさせた。 腕に抱えた端切れで作っってもらった人形をぎゅっと握りしめる。 「花緒が女の子だから、お嫁さんをもらうんでしょ?お父さまと平ちゃんが疲れているのは、花緒が女の子だからなの?」 5歳のいとけない子供の口からその言葉がでると、じっと黙っていた兄がはっとしたように顔を上げて娘を見た。 花緒が男の子だったら。 もしそうだったら、この嫁さがしはなかったかもしれない。大きくたくましく育つはずの男であれば、労働力として期待できる将来もある。嫁を娶って子をもうければさらにだ。 将来ほぼ確実にこの家を出ていく女の子は、この酒蔵にとって働き手として期待は薄かった。 花緒は使用人とはわけが違うのだ。この酒蔵の娘として、立派なところへ嫁入りさせてやらねばならない。 そんなわけはないだろう、と花緒に声を掛けるのは簡単だが、この子はこれからそんな言葉は嘘だと思わずにはいられない現実をいきるのだ。
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