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「あ?俺の?何が決まったんだよ」 お前さんってどうしてそうすぐ怒るんだろうねえ、と義姉さんが困った顔をしながら丁稚の泰助に握り飯をやっていた。食べたら今日はもう休んでいいよ、と義姉さんに声を掛けられると泰助は頬をカッと赤く染めた。 「お前の嫁だよ。茶問屋の旦那が紹介してくれた三男坊だ。世が世ならお武家さまの家系らしいし、いい話だからまとめてもらってきたよ」 「こんな時代にお武家さまも何もないじゃねえか。今の時代、皆平民さ。あれだけ渋って迷ってたのに、どうしてそんなすぐにまとめてきたんだ。怪しいな」 俺の指摘に兄は黙っていたが、煙管で煙草をふかせたあとふうっと煙を吐いた。 「うちの酒をそりゃあもう買ってくださってね、茶屋の旦那。貰ってやってくれってさ。家柄だって怪しいわけでなし、結納金どころかうちは今年一年の酒の半分以上を買ってくれるっていうじゃないか、だからだよ」 「結局は金かよ」 「辛抱強く、優しい方だそうだし、何より田植えの前に来てもらえる」
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