要塞都市

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 私が生まれた家系は、男子のみが代々異能を引き継いでいた。  国主である本家に仕えて国政の裏方を担っていたが、異能ゆえ寿命が長く、国主何代にも渡って仕えていたので、今思えば国主側は相当やりづらかったろうと思う。その状況で我が家系が分家としての地位を保っていられたのは、「ニンゲンの国はニンゲンの時を生きるものが治るべき」という確固たる倫理観を継承していたからだ。  ところが戦乱期に入り、様子が変わってしまった。戦場で異能を駆使し、華々しい戦果を上げて、国民から英雄視されたところで何かを勘違いしてしまった。……恥ずかしながら、我が弟のことだ。  国政に口出しし、思慮深い国主を優柔不断と非難した。一度の戦勝に酔った国民は、弟に味方した。文官であった自分は、戦争で発言力を強めた武官である弟をおさえることはできなかった。  父の病死が決定打となり、立場が危うくなった私は国を出た。それから、いくつもの国を渡り歩き、傭兵として糊口をしのいできた。雇われ兵として過ごした何ヵ国目かの戦場で、故国の滅亡四散を知った。  当時は大河を挟んで大陸の反対側にいたので、仔細のほどは知れず弟がどうなったのかさえ分からなかった。所詮、我が異能など「はったり」だ。それで地位や名誉を得ようなどとはおこがましい。どうせ、お調子者の弟らしい最期であったのだろう。
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