2-EXTRA 鬼灯よ 茜轟き 初まり初まり

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「コウヤぁ!だいじょうぶですかぁぁ!?」  岩陰の奥の方から不意に、殺人未遂の罪を犯した容疑者(ヒルメ)の声が聞こえる。 「大丈夫なワケあるかボケェェ! テメーよくも(おとり)にしやがったな! 後で覚えとけやァ!!」  トカゲ野郎と命知らずの鬼ごっこを続けながらも、出来る限りの大声で彼女に怒鳴り返す。 「まだ叫ぶだけの元気は有るようですね! 安心しました! その調子であと一、二分持ち(こた)えてください! 頼みましたよ!!」 「ア"ァ!? 無理に決まってんだろ!!、何ザけた事 (わめ)いて──ッ!?」  二発目となる罵詈(ばり)雑言(ぞうごん)の標準を合わせようとした口は、途端に(つぐ)まれてしまった。  彼女の彼女の掌にて始まった、目を合わせられない程に(まば)ゆい神秘的な輝きが、唯一の理由だった。  逃げながらでそうずっとは、と言うかほとんど 5 歳児がノートのハジに作ったパラパラ漫画並みのコマでしか見れないんだが、その一枚一枚すべてが、先ほど枕元で目覚めた時の奇跡 如きでは到底 叶わない程の、    そんな美しさを(まと)っていた。     ──────〽︎──────      『(マバユ)(ヒカリ)()ラシ()シ、(ハゝ")宿痾(シユクア) 穿(ウガ)(モノ)ヨ  耀(カゝ"ヤ)日輪(ヒノワ)(ツカサド)リ、(ソヨ)日向(ヒナタ)(マボ)リシ(モノ)ヨ』  辺りの空気を幻想に染め上げながら、いよいよ初まった魔法の詠唱。得体の知れない不可思議な神秘に、ピリピリと皮膚が震える。  普段お花畑(きょうかい)や街で耳にするのとは余りにも掛け離れたソレは、まるで(よい)に小鳥が一匹、秘めたる慕情(ぼじょう)(ささや)いているのかと思う程に透き通った か細い声にも関わらず、断末魔を張り上げながら仲良くバケモノと追いかけっこ(殺意)をしていた俺の耳にまで、何故かハッキリと聴こえた。 『遙カ天上ニ神留坐ス大日孁ノ命以テ、遍ク万象ヲ導キケリ太陽ヨ  跋扈セリ諸々禍事ヲ、祓へ給ヒ清メ給フト申ス事ノ由ヲ、畏ミ畏ミモ白シ上ゲル』
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