37人が本棚に入れています
本棚に追加
「もちろんですよ、彼らは手に毒 持ちませんから。ハイ、アナタの分!」
快活な声と共に悪意ゼロ、満面の笑みで幼女から手渡されたのは、ド派手な黄緑に焦げが付いたカオス。多分夕方五時ならモザイク掛かってる。俺の脳と耳が壊れていない限りでは、誠に遺憾ながら食べ物らしい。
「お昼ごはんは灰になっちゃいましたからね~、おなかペコペコですよ。いっただきま~す!」
アっ、いただ?、食べイった?——イッチャたぁ!、神サマァッ↑!!
「ろうひはんへふふぁほうあ、はえひゃいまふほ?」
手に蛾の幼虫を乗せられた婦女子のような目で凍り付いた俺を、ヒルメはその小さな口にダークマターをほおばりながら覗き込んでくる。
「ㇵッ!——、ひょっとして素焼きはニガテでしたか?、ご安心ください。そういう時にはコレ! 翠極 印の秘伝せう油をかけてあげませう! それ~♪」
受け取ったまま恐怖の楔で打ち付けられ、微動だにしていなかった手元のダークマターにドバドバと注がれた "ショーユ" なる謎の液体。手にまで滴ってきたソレをぬぐう事すらできず、まだまだ顔色と心拍数だけが落ち続けていった。
エっ、どーしろと?、いや "コレで大丈夫ですね!" みたいな顔されても困んだケド!?、やべぇ喰うのかコレ!?、マジで!?
「……い、イヤ。でしたか?、」
「——それズルじゃん!!!、そ」
手に握った食べかけのダークマターと唇を震わせて、目に涙を浮かべた幼女。思わずなけなしの良心を握っては、泣きてぇのはコッチだという気持ちを抑えながら慰めにかかる。
「別に無理して食べなくたって……
最初のコメントを投稿しよう!