3-1 ハロー幼女

4/8
前へ
/120ページ
次へ
「もちろんですよ、彼らは手に毒 持ちませんから。ハイ、アナタの分!」  快活な声と共に悪意ゼロ、満面の笑みで幼女から手渡されたのは、ド派手な黄緑に焦げが付いたカオス。多分夕方五時ならモザイク掛かってる。俺の脳と耳が壊れていない限りでは、誠に遺憾ながら食べ物らしい。 「お昼ごはんは灰になっちゃいましたからね~、おなかペコペコですよ。いっただきま~す!」  アっ、いただ?、食べイった?——イッチャたぁ!、神サマァッ↑!! 「ろうひはんへふふぁほうあ、はえひゃいまふほ?」  手に蛾の幼虫を乗せられた婦女子のような目で凍り付いた俺を、ヒルメはその小さな口にダークマターをほおばりながら覗き込んでくる。 「ㇵッ!——、ひょっとして素焼きはニガテでしたか?、ご安心ください。そういう時にはコレ! 翠極(せんごく) 印の秘伝せう油をかけてあげませう! それ~♪」  受け取ったまま恐怖の(くさび)で打ち付けられ、微動だにしていなかった手元のダークマターにドバドバと注がれた "ショーユ" なる謎の液体。手にまで(したた)ってきたソレをぬぐう事すらできず、まだまだ顔色と心拍数だけが落ち続けていった。  エっ、どーしろと?、いや "コレで大丈夫ですね!" みたいな顔されても困んだケド!?、やべぇ喰うのかコレ!?、マジで!? 「……い、イヤ。でしたか?、」 「——それズルじゃん!!!、そ」  手に握った食べかけのダークマターと唇を震わせて、目に涙を浮かべた幼女。思わずなけなしの良心を握っては、泣きてぇのはコッチだという気持ちを抑えながら慰めにかかる。 「別に無理して食べなくたって……
/120ページ

最初のコメントを投稿しよう!

37人が本棚に入れています
本棚に追加