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3-2 暗がり怖がり独りよがり
……此処は?、
握られた手を放ったらかしにして、口を動かすことなく俺はとなりに目線をズラす。
「町外れの小川から、本来はここを通って来るんです。崖から落ちてきたアナタと違って。生憎 道中は真っ暗ですが心配ご無用。ゆる~い登り坂が続くだけですから、一時間も歩いてればお月様と再会できますよ」
「あぁそういうことか。確かに普段どうやって生活してんだって話だよな。だけど……んん、ん~、1 hour かぁ……」
無機質な説明に対して引き延ばしたセリフとは裏腹に、縮こまった背中と身震いする全身。
モチロンそんな醜態を、現在進行形で手と手が繋がっている彼女が見逃してくれるワケもなかった。
「あっれぇアレアレェ?、どうしましたぁ?、顔色スッゴイ悪ッるいですよセンパイ。 もしやアナタその年とその口調で、"ボ、ボク暗いトコがニガテなんですぅ" なんて言い出し……いやぁーまさかまさか!そんなハズは──
「うっせウッザ、怖いィ? 怖いィィ↑↑!? nなワケねーじゃん!! こちとら物心つく前から好きな色と聞かれれば迷わずペンタブラックのコウヤ様だゾ!? 上等だぜ、幽霊だろうが悪魔だろうがブッ飛ばしてやる!」
「え、幽霊なんか信じてるんですか?」
………………」
………………」
………………」
「──ッべっ別に!? 信じてねーけど!?
信じてるワケ無いんでござりまするケド!? ただ、アレだよ?アレ、アンタが信じてるかなぁ的なそういうアレ! スピリチュアルグローバル文化理解的なアレ。断じて俺がアレなコレしてソレなワケじゃ無くて!!」
「ドレですか……というか早く帰んないと親御さん心配しますよ、あんまし深夜に通るのも危険ですし。
「ハッ!、門限なんてコーショーなモンある訳ねーだろ!? だいたいあのヘタレ親父が俺のこと締め出すか?……ナイナイ!! 今頃『ゴウ"ヤぁ"~、どごいっだん"だヨ"ォ"~』って泣き潰れてる頃だろーよ」
「何笑ってんですかおバカ! 尚のこと帰んなきゃダメでしょうが!」
生まれたての小鹿みたいに震えるヒザを、必死に冷や汗のスプリンクラーと大声でゴマかしていた俺。
しかし抵抗も虚しく遂に体は叱咜と共に、背後 にて蠢く暗闇へと押し飛ばされてしまった。
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