3-2 暗がり怖がり独りよがり

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「そう言えばよ……」  暗闇に閉ざされた洞穴(しかい)の中、唐突に声を掛ける。繋がれた手の奥につながって居るであろう、幼女に向かって。 「ん~……?」  限界を隠す気がゼロの微睡んだ声だけが、彼女の方から弱々しく返ってくる。 「あぁ、悪りぃ。疲れてんなら良いわ、」 「べつにらいじょーぶですよぉ~? 寧ろこう、話してないと逆にキツいと言うか、身体のねんれーに引っ張られるというか……」  途中途中 呂律の回らなくなった声と共に、何度も何度も目をこする音が聞こえてくる。 「、なら聞くけどよ……あの、まぁ、全部焼けちまった後でこういうの聞くのもアレだが、何であんなトコ住んでたのかって。気になってさ? ──ホラ、普通はあんな崖の下のポツンと一○家なんて住まねージャン?、テ○東 に出たいとかなら別だケド」 「あーアレですよアレ……実はあの(やしろ)、マイホーム兼 神殿でして。地下の大魔王ネク・ノアをふーいんしていたんですよ」 「おーマジでか、そりゃスゲェや」  ざっざっ、ざくざ、ざっざっ、ざくざ…… 「ツッコミ! どこ行っちゃったんですかツッコミは!?、ボケですよボケ今の! 魔王なんてワードをサラッと華麗に右から左へスルーしないでください!」  自分の放った 14 歳児レベルの設定を間に受けられたせいで、足音しか聞こえなくなった洞穴の中。  ビリビリをぷっつんしたヒルメは、何の違和感もなく前へ進んでいく俺の手を強く引っ張り戻した。 「無茶言うぜ、俺が今 知ってるアンタって ①崖から落ちた人間を無傷で蘇生 ②見聞一切無い異文化完全包囲の家に居住 ③車程あるバケモノ+α を一瞬で灰にする ④魔力を使い終わった途端に幼くなる ⑤千年に一人レベルの美少女  ──だぜ?、んな読むのも疲れる期間限定プレミアム幕の内弁当みたいな設定のヤツから、今更 何出てきても驚けねーよ」 「むぅ……言われてみれば、」  若干早口で再生された、褒めてるのか(けな)してるのか自分でもよく分からないけど多分 褒めてる弁解に、ヒルメはゆっくりと納得しながら歩くことを再開した。  "千年に一人" ってのは否定しないのかよ、  と自分の誇張にツッコみたくなったが、今マトモに会話 出来ているのが幼女化+暗闇のお陰だったのを思い出し、ハリセンをそっと心の中にしまった。 「……逃げて来たんです、」  暫く経ってポツリ。何処かありもしないゴミ箱に吐き捨てる様に、彼女はそう呟いた。 「……逃げて?」  ソレをただ、()き返した。  彼女はしばらく黙りこくって。  洞窟に足音が 5、6 回鳴って。  ソレから一呼吸置いて、ようやく続きを、口を開いた。
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