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やがて頭蓋骨と、妙にきれいというか朽ちていない、新聞に挟んであるようなチラシの束が目に入り、通報したのだ。
「それにしても、チラシの裏にこんな不気味なものを書くなよ。つい読んじまったじゃねぇか」
ちょうど読み終わった頃合いに警察は来た。チラシは元の位置に戻しておいた。
一応の連絡先は聞かれたがすぐに開放してくれ、安心する。
「はぁ。今日のところは帰るか」
車に乗り込み、エンジンをかける。何気なくバックミラーを見た。
知らない女が後部座席に座っている。
「……はっ!?」
慌てて振り向けば、やっぱり座っている。
ぼさぼさの髪で顔は全く見えない。
「うっ、はっ……!!」
反射的にドアを開けようとするが、開かない。
すぐ窓の外に、ピンクの小花柄のパジャマを着た女が立っている。
だが、後ろにも同じ女が座っている。
「くっ、あぁぁあ!!!」
アクセルを踏んでも動かない。見れば、足元に女の顔がある。
荒れて伸び放題の髪の間から、濁った眼球と目が合った。
全く知らない女だった。
「お前誰だよ? 早く死ねよ」
ぬるく生臭いにおいでいっぱいになった車内で、すっかり黄ばんだ虫歯だらけの歯を見せる女は、笑っていた。
了
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