1、星さん降ってくる

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*  スマホの履歴に残っていた「星さん」についての商品紹介には、覚えがあった。  先週の金曜日、上司の指示通りに発注した商品は桁が間違っており、俺の発注ミスだと押しつけられ、その尻拭いをサービス残業で行った夜のことだ。  在庫を抱えないよう営業先にへこへこと頭を下げ、なんとか不利益にならずに済んだ。利益は守ったが、メンタルと体力を削られた俺は、体を引きずって家に帰り、ビール片手に恨み言をぶつくさと言いながら、スマホで「地球 征服」と検索した。  当然、まともなページなどなく、厨二病を拗らせ妄想を綴ったブログや、リアルな世界情勢であるロシアとアメリカの拮抗状態、日本軍の活動報告など、俺の期待するフラストレーションを晴らしてくれるような内容は記載されていなかった。  諦めかけたとき、スクロールした画面で「オンライン地球征服」のページを見つけ、クリックしたのは、ブラック企業にお勤めの方へオススメです、と、煽り文句にホイホイされたからだ。  そして、会社に対する不満をオンライン上で金髪美女が聞いてくれた。酔っ払って、ヘロヘロになった俺は泣いて怒って、シラフでは言えないようなため込んだ鬱憤(うっぷん)を爆発させた。  その後、オプションで「地球征服」を勧められ、何かと問うと、彼女は「未来人が地球を征服するの」と笑顔で告げた。  俺の好きなS F混じりの冗談に好感を抱き、愚痴に付き合ってもらいスッキリしていたため、軽い気持ちで概要欄の「出資する」ボタンを押した。  ワンクリック、ワンコインという、キャッチフレーズとリーズナブルな値段も良かった。  すぐさま前記のメールが届き、冗談にしては手が込んでいて面白いサービスだな、と残りのビールを(あお)って、スマホを閉じた。
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