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「ひーくん、思い出した?」
「ああぁぁ、俺……、地球征服に出資した」
「でしょ? まず、会社ぶっ壊す?」
「ぶっこ!?」
いや、待て、待て、待て。
深夜の公園で騒ぐと近隣住民の迷惑になるので、とりあえず一人暮らしのボロアパートに星さんを引っ張る。
「ひーくんが呼んだんだよぉ〜、破壊を命令してよぉ!」
ピンクの頬をぷくうと膨らませ、畳の上で白い脚を伸ばして星さんは座っている。明るいところではっきりと彼女を見ると、世の男達を一瞬で虜にしてしまうような、魅惑的な外見をしている。
それなのに、とんでもない事を言う。
「ひーくん、壊せるモノないの〜?」
「……新手の詐欺?」
「詐欺じゃないよぉ! ほら、これ見て。未来の時計で、現代の技術では作れないモノなの。なんと、レーザー光線が出るんだよっ」
「出るんだよって……って、マジ? ちょっと待って、マジで?」
「うん、見る? 破壊できるモノ貸して〜」
ぷっくりとした唇を尖らせ、自信満々で豊満な胸を張る。体のラインを強調するようなアイスブルーのリブニットとショートパンツを履いているため目のやり場に困る。
美女で、スタイルもいいなんて反則だ。
「壊せるもの、早くぅ!」
と、急かされるまま、キッチンに置きっぱなしだった空き缶を持ち、テーブルの上に乗せた。
「これ、壊していい?」
星さんは目を輝かせ、俺を見る。
言葉と見た目のギャップが激しいが、レーザーに期待が高まり、頷く。
「じゃあ、壊しまーすっ!」
とびっきりの笑顔を浮かべ、星さんは腕時計のスイッチを押した。
ビビビビビビ、というあからさまな効果音が響き、赤い光が真っ直ぐに銀色の缶に刺さった。鋭利な刃物でスパンと切ったように、缶は真っ二つに割れる。跳ぶように別れた缶は空中に浮き、発砲音を立て、爆ぜた。
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