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「アリス様、お久しぶりでございます。リマーにはどうして……?」
宿屋の女主人・ナディがニコニコして両手を広げていました。私は思わず抱きつくとナディにギューッと抱きしめられました。
ちょっと、ナディ、力がつき過ぎじゃない? 60歳過ぎていたよね?
「ほら、アリス様が苦しそうだ。もう勘弁してやれ」
ガイソンはエプロンをしたまま顔を見せ、私に丁寧にお辞儀をしました。それからガイソンはナディに近づいて耳打ちしています。
「ああ、ええっと……」
ガイソンが後ろにいる王子の姿をみつけたようです。ガイソンは王子のことをちらっと見て、私の方をむきました。王族か、王族に匹敵する身分の人じゃないかと検討をつけたようです。
王子の服の質や、雰囲気、あの特徴ある目の色の青を見たら、ばれちゃいますよね。
「……いいんですよ。アリス様も年頃ですからね。新しいお相手も……、いい男じゃあないですか。婚約破棄されたって聞いて、心配したんですよぅ。よかったよかった」
嬉しそうにナディが私の腕をバンバン叩きます。
小さい頃から面倒を見てもらって、大きくなってからもお父様に連れられて、こちらの宿に泊まっていたこともあり、ナディはとてもフランクです。
リマーの町の中を「お嬢さま、お嬢さま」と連発されてもね……、視察がやりづらいからちょうどいいんですけどね。それにナディとガイソン大好きだし!
「いえ、その……」
王子が何て説明しようか考えています。
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