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翌日、三好が鈴木探偵事務所を訪れた。そのニヤついた表情から、握られた茶封筒が『成功報酬』だと分かる。
「本当にありがとうございました」
三好が鈴木たちに向かって、深々と頭を下げる。この性格なら、何もせずとも結果は同じだったかもしれない。
「で、今はどんな感じなの?」
名張がズケズケと首を突っ込む。ただ、鈴木も気になっている所ではあった。
「今度ウチに来たいそうです!」
「え、いきなり?」
代表して鈴木が疑問を口にする。
「はい、どうしても会いたいって」
「それって、幽霊に、って意味じゃないよね」
「僕と、幽霊にです」
三好は以前までの弱々しさが抜け、一人の男として自信に満ち溢れている。依頼人が納得しているのであれば、探偵としてこれ以上の事はない。
「実は、追加の依頼があるんですが……」
三好は言い辛そうに首を竦めた。嫌な予感がする。
「鈴木さん、効率的な筋トレを教えてください」
「はぁ?」
鈴木は探偵としての自分が溶け出す感覚に陥る。
「名張さんには、料理とカラオケを教えて欲しいです」
「いいよー」
優秀な助手が二つ返事で快諾した。
「前にも言ったけどさ、ここ探偵事務所だよ」
鈴木は眩暈に襲われ、窓から新鮮な空気を取り込んだ。
傘を携えた人々が左右に流れていく。
空は4日前と同じ、筋肉質な雲で覆われているのだった。
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