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始まり
『いつもと同じ』
それが私にとっての一番の安心材料だった。
夜勤の仕事が終わると、いつものように帰路の途中にある商店街へと向かう。
そこにあるカフェの、今時のクリームもりもりオシャンティーなパンケーキーーではなく、その隣にある牛丼チェーンで紅しょうがをいっぱい入れた昼定食をもりもり食べる。
それでお水をぐいっと二杯飲んで、店を出て隣のとなりにある書店で何か面白そうな本が出てないかをチェックする。
一通り見終わると、店員さんとお勧めの本について十分程語り合い、手を降って別れる。
その後は何をするでもなく家へと帰る。
家へと帰ればそこはもう自分のテリトリーであり、全てが解放されるので好きなことをする。
それが私のルーティーン。
私の外出時の行動パターンはほぼ同じで、突発的なアクシデントにめっぽう弱い。
車に乗っている時も同じ道しか通らないので、工事で迂回なんてさせられようものならまず間違いなく道に迷う。
方向音痴も手伝って、泣きながら運転したことはもはやトラウマだ。
だからいつも同じでいい。
いつも同じがいい。
それなのに。
そう、それなのにあの日はなぜかいつもと全てが違っていた。
それはいつもの夜勤の仕事終わりだった。
だけどいつもより少し早めに終わっていた。
そして帰路の途中にある商店街へと向かった。
その道すがら、いつも昼には開いているお店がまだ開店前で閉まっていた。
商店街につくと、牛丼屋さんがある左側ばかりいつもは見ていたのになぜかふと右側ばかり見て歩いていた。
全く自分の記憶にはなかった花屋さんやら、ドラッグストア。
しっかり見てても見落としてしまいそうな小さな判子屋さん。
それらを通りすぎて暫くした後。
私は見つけた。
この場所を。
そして見てしまうのだ。向こう側を。
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