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アズサから、その電話が掛かったのは朝の八時頃で、受けたサヤカは、異様な雰囲気に呆然としながら、
「分かった‥‥。とりあえず今から行くから、待ってて」
『ん。ありがとう‥‥。待ってる‥‥』
とアズサの声は、震えていた。
二人は共にR女子大学の三年生で、サヤカのマンションから、アズサのマンションまでは、徒歩で十数分の距離だった。
二人共、恋人も出来ず、これといった進路も定まらない日々の中で、なんとなく学生生活を送っていた。
アズサはミステリー好きで、サヤカはラブストーリーが好きだった。
そしてテレビのニュースなどを見ると、
「どうせこんな時代。とりとめのない学生もイイものよ」
――と二人は良く言っていた。
サヤカは、とりあえず「急用なんで」と言って、お隣から自転車を借りると、アズサのマンションに向かった。
サヤカは、いつになくドキドキしていた。
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