冷たい人――からのメッセージ

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『こんな事をして、本当にごめんなさい。 僕は、真上の部屋に住んでいた、イナヤという大学生です。 僕には、友達とか恋人が一人もいなかったんです。 そんな僕が、何故か癌に侵されてしまい、余命半年という宣告を受けてしまいました。 もっとも僕自身、死ぬことは怖くありません。 ただ、あまりに早いと言うか‥‥。 したい事、まだまだ沢山あるのに‥‥。 だけど、もう、どうする事も出来ません。 人の命ってモロいですね‥‥。 本当に残念だけど、僕はこの世からいなくなります。 僕の人生には、映画やテレビドラマにあるような、ドラマチックな事は、何一つ無かったです。 ただ僕は、少し個性的な行動や考えをするヤツだと言われたことがある。 貴女を含めて多くの人にとって、僕が別の世界に旅立つことは、大河の一滴にも満たない出来事。 いや出来事ですら無いからしれませんね。 けれど、僕のように、メディアに載るような大きな出来事が無い人にも、他の誰とも代わることができない僕だけの人生があったんです。 人は、みんな自分と言う舞台で必死に主役を演じています。 ただ僕は、ちょっと早く舞台から降りることになっちゃいましたが‥‥。――』
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