殉情

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 他の友達はあたたかな夕食があって、父親もいて、高校に当たり前のように行ってるのに、なんで。   なんで、わたしだけ。  涙は人生の中の闇を何一つ解決してくれるものではなかった。いい加減、泣いて自分を憐憫にかけるよりも、なるべくたくさんの資格を取得して世のために働いた方が自分のためにもなる。自分がそう考えられる大人になるのに時間はかからなかった。  だが、無情な電話が1本入る。好きな人も出来るような、そんな年頃になってからだった。 それも突然、知らない病院からだった。  内容は、母親が痴呆の入ったアルコール依存症で入院していて、その入院費すら払えていない、といったものだった。 今まで働いてきた少ないお金をそんな形で吸い取られ、母親に回復が見込めないと見切った医者から退院しろと世話まで押し付けられた。  その後、頼る人を考え市役所へ相談しにも行ったが、無情にも誰も力になってくれなかった。……それよりも先に依存症を直した方がいい、と逆に説教をされる始末に気が狂いそうだった。母はクスリにも手を出していたのだ。 そんな騒ぎの中、付き合っていた恋人は去り、独り身になった。  かつて、母親と呼んでいた人はクスリとアルコールのせいでトイレが上手くできず、オムツをつけるようになっていった。それでも酒から離れられず飲んでは布団で横になる、そして収縮した脳からは自分が娘である、ということすら消去されていたのだった。 こんな生活の中で、何を見いだせるというのだろう?
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