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◇◇◇
┈┈そして、2021年。現在。
「こーらっ!心菜! 」
栖原 里穂は娘である心菜に喝を入れた。
ただ今 心菜は5歳、反抗期真っ只中である。
「もー、今からお墓に行くのにそんなに服汚してどないするん! 」
キャーっと言って走り回る心菜を捕まえたのは旦那の翔太だった。
「かなこおばあちゃんの命日やろ? わかるやろ? お墓のばぁばに元気ですーって言いに行くんやで。心菜。」
「ほんまにきかん坊やから、かなんわ。」
加奈子は最後に、1人の娘を産んでいた。
栖原の名前を背負い、最後まで真面目に生きた人生であった。
「なー、心菜……」
里穂はゆっくりと心菜の頭を撫でながら言う。
「毎日一生懸命生きるんが、人生なんやで、これ、加奈子ばあばの格言やからな。」
「もー、その言葉1万回くらい聞き飽きたわー。なー、心菜。それから『必ず明日がくる』やっけ? 」
「1万回も言ってへんわ。大袈裟やな。」
里穂と翔太は、心菜にギュッと寄り添って大好きだよ、と頬擦りをした。
少し肌寒くなってきた季節にフォーマルの装いは寒いし冷たい。
「なー、早くに行ってかえろか。今夜は鍋や。」
「げっ! またかよー! 」
「じゃあ、自分で作れっ! 」
┈┈┈愛情は、絶やされることなく続いていた。3人の幸せそうな姿をそっと空から見守る加奈子が、そこにはいた。
了
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