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オンライン探偵
彼女は現場を見下ろしていた。
落ち葉色の小山から立ち上る煙。
『火事ね。ナニモノかが火を付けた可能性があるわ。』
彼女は目撃証言を集める。
『あの小山の地主は良いヤツさ。なんたって米を分けてくれるんだ。火事なんて気の毒に。』
そう言うのは、彼女と同じ立場のヤツだ。
彼女もあそこの地主には世話になっている。
『この前まであんなところに小山なんてなかったよ。』
次の話は、とある大家族の大黒柱から。
親戚がどれくらい居るかも把握出来ないくらい大家族の彼は、よくこの辺りをウロついているらしい。
『小山の中に銀色に輝くお宝を隠してるのを見たぜ。』
次に話を聞いたのは、彼女より声も体も大きいヤツ。
この彼は、彼女より走るのも速いが、普段は行動が制限されている。
しかしそれを、本人すら”かわいそう”とか”惨め”などとは思わない。
最後に話を聞きに行ったのは、彼女と同じ領域に住まう、真っ黒なヤツだ。
彼女は真っ黒な彼が正直苦手だ。しかしお世話になっているお爺さんのために、話を聞く。
『火を付けたのは地主の爺だ。オレは見た。』
- なんて事!あのお爺さんが自分の土地に火を付けたなんて!
彼女は驚き、もう一度現場を確認した。
落ち葉色の小山は、もう真っ黒になってしまっていた。
その小山に、お爺さんが近づいていく。
その後ろから、少年がバタバタと走って付いていく。
「お爺ちゃん!出来た?」
少年はせわしなくお爺さんの周りを動き、何か叫んでいる。
お爺さんは小山を棒のようなものでつつき回し、小山から何かを取り出した。
少し黒ずんでしまってはいるが、間違いない。
『……あれね、銀色に輝くお宝!』
お爺さんはお宝を手袋をして掴むと、外側をバリバリ剥がしている。
「熱いで、気ぃ付けぇよ。」
そしてそれを少年に渡した。
「ありがとー!」
少年はそう言うと、彼女にお宝の証言をしてくれた彼の元へ駆け寄った。
少年の手の中には、黄金色に成ったお宝。
「ポチも食べよー!焼き芋!!」
嬉しそうに尻尾を振る彼、もといポチ。
それに笑顔の少年、それを眺める笑顔のお爺さん。
『……たいしたこと、無かったのね……。安心したわ!
探偵の出る幕も無かったわね!!』
彼女はチュンと一声鳴くと、茶色の小さな羽を広げて電線の上から飛び立った。
『明日の朝、また来るわ!』
明日、お爺さんが彼女達のためにご飯を餌台に置いてくれる時、彼女はまたお爺さんのもとを訪れる様です。
電線の上の探偵 END
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