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「小鳥の名は、会えない祖父ちゃんからのプレゼントだ。いいな、琴子」
琴子も、名の由来を知ってついに涙をこぼしてくれる。
「有り難う、英児さん。嬉しい……。でも、」
『でも』?
「なんなのよー。私、もうすっかりセナちゃんのつもりだったのに。いつその名前も候補にしていたのよ」
そんな彼女に英児は言う。
「候補になかったよ。いま、閃いたんだから」
「いま、閃いた?」
彼女の呆れた顔!
「もうもうもうっ。なんでそんな閃きばっかりなの! その閃きでなんでそんな素敵なことを思いついてくれるの! もうもうもうっ」
『嬉しいけど、なんだか納得できない』。涙もそこそこに止まってしまったと琴子が怒っている。
「だってよう、こいつを抱いた途端に、」
「ピカって来ちゃったのね」
こちらも旦那の突発的な行動は慣れっこ。『ピカとビリが来たなら、しようがないわね』と落ち着いてくれた。
英児の腕に中で、もう小さな彼女がちょこちょこと腕を動かすと、本当に感動。
「俺の子か。俺の……」
最初の家族は女房、そして娘が出来た。また一人、英児の傍に。
「パパは瞬発ロケットの空飛ぶ龍で、娘もその後をぱたくたついていく小鳥ちゃん……。それが道路でなんて、なったらどうしようかな」
つまり。パパの背をみて、女だてらに『走り屋』になったりして――と、ママが冗談を言っているのだが。
「ばっか。女だぞ。絶対に琴子みたいに女らしい女になるに決まっているだろ」
ママが大好きな眼鏡ケースのように。乙女チックに育つ小鳥ちゃん……。
父ちゃん。ハチロク、借りていく。
この娘が車に乗るまで――の、龍星轟ファミリーなお話
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