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それで、彼女がどうして疲れ切った顔をしていたかも理解できた。そして母親に手を添えて根気強く耐えているその姿が『思った通り一生懸命で、そして耐え忍んでしまう子』だと感じた。でもそれで決定打……惚れたんだと思う。
だから再会した時、手放したくないと思ったから……。あとは彼女と彼女の母親のために、『なにか手伝えないか』と一生懸命になっていた。
その彼女も、彼女のお母さんも。いまはもう、英児の家族になろうとしていた。
―◆・◆・◆・◆・◆―
いまはすっかり『俺の女』として寄り添ってくれる夜桜の彼女。
思った通りの女で、彼女に優しく暖かく愛されると英児はまだ夢ではないかと思ってしまう。しかもすっかり車好きになってくれて。
高く透き通る青空。銀色のゼットはついにその事務所に到着する。
それなりの大きさの工場を併設している印刷所と製版会社。その駐車場を隔て、敷地内の片隅、公道側にモダンなレンガ造りの小さな事務所がある。数台が駐車できるそこに、確かに黒いスカイラインが停まっていた。
しかも。そのスカイラインの隣には見覚えある白いトヨタ車も駐車しているのをみて、英児は思わず笑ってしまう。
「あはは。若葉の琴子がゼットに乗って通勤してくるようになって、さては三好さんも負けまいと愛蔵のセリカを動かすようになったのか」
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