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その玄関ドアから見える事務所のデスク。三好社長デスクの目の前に、ノートパソコンと向き合ってキーボードを叩いている彼女を見つけた。
「琴子、これもな」
側にいる三好ジュニア社長から書類を渡され、彼女が『はい』と笑顔で受け取っている。だが。モニターに向かった途端、真剣な眼差し……。
「このデジタル版下の色指定パーセンテージ。デザイナー指定の色と間違っていないかチェックしておいてくれ」
また三好社長から。画用紙のような原稿とファイルを差し出され、それも彼女が笑顔で『はい』と受け取る。
「社長。どちらが急ぎですか」
「うーん。どっちなら早く終わる?」
「色指定チェックなら、十五分いただければ」
「じゃあ。そっち先にして俺に返して」
「はい」
そうして彼女と三好社長はまた黙々と仕事に集中。
初めて見たな。あんな琴子。でも、彼女らしいな――。英児はそう思った。
目の前にあること、なんでも真剣に取り組んでくれる。三好ジュニア社長がそこを買っているのがよくわかる。英児の店でも『やる』と決めたら、彼女はまっしぐらになって取り組む。その姿が従業員に認められ、彼女はもうすぐ『龍星轟のオカミさん』だ。
でも、この仕事も好きなんだろうな。と、英児は思っている。それに龍星轟では、あんな綺麗な格好をして仕事が出来なくなる。側にいて車屋で一緒に頑張ってみたいと思うこともあるが、毎朝、女らしさ満載に綺麗な姿を見せてくれる彼女もたまらなく好きで、それが英児を元気にさせてくれる。
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